診療支援
治療

メディアリテラシー
media literacy
佐藤和夫
(国立病院機構九州医療センター小児科・医長)

A.メディアリテラシーとは

 リテラシーとは,読み解く力,ある分野に関する知識やそれを活用する能力であり,メディアリテラシーとは,メディアを活用する能力である.メディアが溢れる現代では「批判的に見る力」だけでなく,「取捨選択する力」と「離れる力」も重要なメディアリテラシーである.本項ではテレビ・ゲーム・スマホなど電子メディアについて述べる.

B.メディアが子どもに与える影響

 ほかの重要な活動の時間を奪ってしまう影響(displacement theory)と内容による影響(content theory)が考えられる.

 a)暴力・攻撃性:暴力シーンへの曝露や暴力的なゲーム使用は攻撃的行動を増大させ,暴力に対する罪悪感を麻痺させる.

 b)運動不足・肥満:長時間の視聴は運動不足を助長し,肥満・体力低下を招く.

 c)性の問題:メディアでの早期からの過激な性表現への接触が,性行動の低年齢化や問題を引き起こす.

 d)喫煙,飲酒,違法薬物:メディアで繰り返し見ることがそれらの使用を促す.

 e)学業成績:長時間視聴・使用は学業成績の低下と関連する.

 f)行動・心理:長時間視聴は注意欠陥の問題や自尊心の低下と関連する.

 g)睡眠:長時間視聴は睡眠時間を減少・不規則にし,睡眠の質にも影響する.スマートフォンに多く含まれるブルーライトはメラトニン分泌を抑制し,体内時計の乱れを引き起こす.

 h)成人期の健康への影響:小児期の視聴時間が成人期の運動不足・肥満・喫煙・高コレステロール血症・高血圧と関連する.

 i)依存・ネットいじめ:ゲームなど報酬系の依存(嗜癖)に加えて,SNSへのつながり依存,ネット上でのいじめは世界中で問題となっている.

 j)脳への影響:神経細胞は筋肉細胞と似て使わないと機能が低下する.考える時間を奪われることによって思考力全体が低下する懸念がある.

 乳幼児期では,言葉の発達,生活リズ

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