診療支援
治療

境界児のフォローアップ
follow-up for borderline children
大瀧 潮
(島田療育センター小児科・診療科長(東京))

A.ポイント

 「正常」と「境界」の違いを意識する.その症状が現在や近い未来の生活に,どのように影響するのかを整理する.また専門医療機関や療育機関へ紹介するタイミングを見きわめ,具体的な日常のかかわり方と見通しを保護者に示す.

B.境界の評価

 「境界」の評価は,おおよそ以下a),b)の2項目を目安としている.

 a)子どもの発達が正規分布と考えると,スクリーニングで気になった機能・能力が5~10%タイル(例:IQ70~85)の範囲内で明らかな異常とはいえないまでも,支援が必要と判断される児と考える.評価方法は,遠城寺式乳幼児発達検査,新版K式発達検査法の項目などを利用すると日常診療中にも目安がつきやすい(例:10か月で坐位ができない,2歳で言葉が出ない).

 b)その症状により,社会的不利を被る可能性が高い児である.それには極端な能力や感覚のばらつきや偏り(例:喋れるが操作が不器用)や,随伴する生活の支障(例:排便は自覚しているが音が怖くてトイレに入れない,構音障害のため主張が伝わらずかんしゃくを起こす)などが含まれる.

 それぞれ原因が器質的疾患(眼科・耳鼻科など)を疑う身体所見に関しては受診を勧める.基礎疾患がある場合,専門医療機関に定期受診時に細かな相談をすることが難しいので,生活期の指導は基本的に地域医療で対応できることが望ましい.

 本項では,比較的遭遇する機会の多い,以下の3つのカテゴリーについて述べる.

1.発育・栄養関連

 乳幼児期の咀嚼嚥下,偏食や食への意欲など感覚面の相談がある.哺乳期から離乳食への移行期は,摂食嚥下機能も成長していき運動発達も同時に進むため,体重が増えにくい.

2.運動関連

 健診で不完全であった定頸,四つ這い,坐位の確認,パラシュートの左右差,シャフリング,歩行の遅れや歩容異常の相談がある.診察では体幹筋緊張のバランスや四肢・殿部・手掌・足裏の過敏性の所

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