診療支援
治療

育児支援システム
childcare support system
稲持英樹
(なばりこどもクリニック・院長(三重県名張市))

 近年,育児支援システムは子育て支援を通じて,児童虐待予防・貧困対策・ひとり親対策など社会的養護の中心を担う事業となってきている.このためには子育て世代に対して,妊娠・出産・育児の期間を通じた途切れのない支援の体制構築が必要である.また従来の各種母子保健事業に基づく養育支援・要保護家庭へのハイリスクアプローチだけでは不幸な事例はなくならず,地域社会全体に対するポピュレーションアプローチによる育児支援体制が求められている.

 従来から子育て支援拠点は色々と展開されてはいたが,相互の連携は乏しく,地域全体への取り組みとしては不十分であった.また母子手帳発行時の健康相談以降,生後4か月までに実施される乳児家庭全戸訪問事業まで,妊産婦家庭と地域保健とのかかわりは皆無に近く,産前産後ケアの充実も喫緊の課題である.

A.子育て世代包括支援センター事業

 このような背景から,児童福祉法・母子保健法の改定により,子育て世代(法令上は「母子保健」)包括支援センター(以下,センター)が2020年までに全国のすべての自治体に設置されることが定められている.センターの必須機能としては,①ワンストップ拠点として利用者目線で途切れのない支援をする,②地域資源を把握したうえで専門的視点をもって支援する,③地域のネットワークを構築し地域連携を行う,ことが求められている.

B.センター事業における地域連携

 センターの担当者は保健師の場合が多いが,保健師だけでセンター事業を展開する方法では拠点数が限られ身近な拠点とはなりにくい.また行政職は異動があり,地域で継続した伴走型の支援をするのには不利である.身近な支援を整備するには,当市のように小学校区ごとに拠点を設置するのは無理でも,せめて中学校区ごと程度にセンター事業の拠点を設置し,主任児童委員や子育て支援員など地域の民間人も登用し,これを地域の保健師・小児科医などが専

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?