学校現場はいじめや不登校など児童生徒の心身の問題が深刻である.そこで国は2009年の学校保健安全法(以下,法)改正において健康相談の条文を健康診断より上位に記載し,同時に学校内外の連携力を高める条文(法9・10条)を新設して対策を強化した.本項では児童生徒の心身の問題の切り札ともいえる学校医と健康相談について述べる.
A.健康相談の法的位置づけ
1.なぜ学校医が健康相談を行うのか
学校医は児童生徒の健康の保持増進をはかり教育の成果を確保するため(法1条),具体的には学校と連携し児童生徒の心身の問題を予防するため,あるいは医療などにつなげるために健康相談を行う.
2.誰が健康相談を行うのか
健康相談は学校医の職務の1つである(施行規則22条).しかし健康相談を主体的に行うのはあくまでも学校であり,健康相談は養護教諭その他の職員が外部機関を含め相互に連携して行うものである(法9・10条).学校医は法9条の「その他の職員」に属するので,専門職として優しく丁寧に指導・助言を行うと児童生徒や保護者の理解が深まり,医学的にも教育的にも価値が高まる.
3.いつどこで健康相談を行うのか
健康相談に関しては実施基準がある(表1図).1958年という古い基準なので文言整理は必要であるが,法的に現在も有効である.そしてこの基準には「健康相談は毎月定期的に保健室において行う」ことが明記されている(表1図下線).ただし前文に「各地方各学校の実情を考慮して円滑に運営すること」と前置きされるので,学校と事前準備してから行う.
4.どのように健康相談を行うのか
a.健康相談の対象者 対象は表1図のごとくであるが,児童生徒自ら,あるいは保護者が心身の異常に気づいたら健康相談の対象になるということが特筆に値する(表1図下線).したがって学校と学校医は,児童生徒と保護者が気軽に相談できる環境づくりと,有意義な相談を行うた