近年の学校現場において,体調不良を訴え,あるいはこころの問題を疑われる児童生徒が少なくない.どの子どもがこころの問題をもち,どのような支援を行ったらよいのか,早期に評価し適切な対応を行うことができれば,子どもは心身の健康を取り戻すと考えられる.
A.児童生徒のこころの問題の現れ方
大人と異なり,言語化が未発達な子どもがこころに問題をもつと身体や行動の変化(心身上の変化)が現れる.以下のような症状の背景には,さまざまな心の問題が隠れている.
1.身体の変化
自律神経系を介する症状が多い.頻脈,徐脈,低血圧や高血圧,立ちくらみ,失神,腹痛,下痢,頭痛,食欲低下,嘔吐,体重減少,頻尿,遺尿,脱毛,視力低下,難聴,発熱,身体疼痛,睡眠障害,気管支喘息,過呼吸,アレルギー反応など.
2.行動の変化
不眠,多動,イライラ,悲嘆,怖がる,パニック,暴力,非行,遁走,ぼーっとする,意欲低下,抜毛,習癖など.
B.児童生徒のこころの問題の背景
以下の3つの視点a.~c.から評価する.
a.子どもの発達レベル 知能の凸凹,神経発達症や学習障害の有無,性格傾向,生活習慣の問題,精神疾患の併存など.
b.家庭ストレス 欠損家庭,夫婦不和,親子関係,経済的困難,保護者の身体疾患や精神疾患,過労など.
c.学校ストレス いじめ,交友トラブル,学級崩壊,教師の教育力低下や心の問題に対する理解不足,学業の遅れ,画一的授業,長い通学時間など.
C.児童生徒のこころの健康の評価:QTA30
数多くの方法があるが心理士による面接,チェックリストが代表的である.後者では最近,子どものストレス状態を簡便に評価できる「QTA30」が日本小児心身医学会の協力で出版された.QTA30は学校現場や小児科外来において心身の問題をもつ子どもを早期に発見し,必要な支援を行うためのトリアージツールとして開発された.
神経発達症や神経症傾向の子ど