治療のポイント
・女児の約2%が側弯症に罹患するが,手術が必要になる重度側弯症に進行する症例は0.1%未満である.そのため軽度の側弯症の場合は,不用意に本人や家族を不安にさせることは慎むべきである.
・習慣性の不良姿勢,腰痛,腰椎椎間板ヘルニア,脚長差に起因する骨盤の傾斜,斜頸,ヒステリーなどにより側弯を生じる場合がある.これらは外的要因の排除により側弯は軽快・消失する.
・一方で,定期的なX線での経過観察を行い,進行があった場合には側弯症治療の専門医に紹介する必要がある.
●病態
・脊柱側弯症とは,正面から見て脊柱が左右に弯曲している状態であり,さらに椎体の回旋(ねじれ)が加わった状態である.発生頻度は側弯の原因,年齢,性別によって異なるが,Cobb(コブ)角10度以上の思春期特発性側弯症の有病率は女児の2~3%である.
・正常の脊柱の矢状面は胸椎は後弯,腰椎は前弯しているが,後弯症では胸椎の過後弯や腰椎の後弯化など,正常の弯曲を逸脱して脊柱矢状面の後弯化が進んだ状態である.
・原因には,脳,脊髄などの神経疾患,筋ジストロフィーなどの筋疾患を原因とした側弯症(神経筋原性側弯),椎体奇形を原因とした側弯症(先天性側弯),そのほかMarfan(マルファン)症候群などの間葉系の異常を原因とした側弯症などさまざまな要素がある.
・しかし,最も頻度が高いのは全身に側弯症の原因となる疾患がない特発性側弯症である.
●治療方針
A.診断
1.問診(既往歴の聴取)
多くの側弯症は全身に合併症を伴わない特発性側弯症であるが,全身疾患の一症状として側弯症が生じる場合があるので,特に心疾患や内臓疾患の有無などの聴取が重要である.
2.診察
脊柱変形に伴い肩の高さの非対称,腰のくびれの非対称,肩甲骨部の隆起(ハンプ)などの特徴的な体幹変形が生じる.体幹前屈時に腰背部のハンプは増強されるため,小さなカーブをスクリーニング
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