診療支援
治療

いわゆる成長痛
growing pain
横井広道
(国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター小児整形外科・医長)

●病態

・器質的疾患のない一過性の下肢痛のことであり,典型例の特徴は以下のとおりである.

 a)幼稚園~小学校低学年の小児で,夕方から夜間に下肢(膝周囲が多い)の疼痛を訴える.痛みの程度はさまざまで泣くほど痛がることもある

 b)さすったり抱っこしたりすると痛みは改善し,翌朝には痛みを訴えない

 c)痛みは不定期に繰り返し起こる

 d)保育所や幼稚園,学校などでの社会生活に支障はみられず,早退したり休んだりすることはない

 e)保護者は痛みを心配して受診するが,来院時には患児が疼痛を訴えることはなく,診察でも明らかな異常所見は認めない

・このような症候の頻度は比較的高く,有病率は2.6~49.4%と報告されている

・病因については骨格的要因,心理的要因,疲労要因などの検討がなされてきたが,いまだ明らかではない.生理的な骨成長に伴い痛みを生じることはないが,病因が不明であることから「いわゆる成長痛」とよばれている.

●治療方針

 器質的疾患との鑑別診断が問題となるが,痛みが一過性であり,来院時には疼痛が消失しており,診察で腫脹や圧痛を認めない場合にはいわゆる成長痛として対応する.診察時に疼痛,圧痛,腫脹,発赤などを認める場合は器質的疾患を疑い,必要な臨床検査を施行する.

 いわゆる成長痛では特別な治療は必要なく,疼痛部位をさするなどのスキンシップが大切であることを保護者に説明する.外用薬の貼付は行ってもよいが,消炎鎮痛薬の内服あるいは坐薬使用の必要はない.

■患児・家族説明のポイント

・頻度の高い症候であること,特別な治療は必要ないこと,年齢が進めば次第に痛みの訴えが漸減すること,後遺障害の心配はないこと,などを説明して家族の不安をやわらげる.

・1日以上持続するような疼痛の場合や,幼稚園や学校での生活に影響するような症状の場合には,成長痛ではない可能性が高いので早めに受診するように説明する.



参考文献

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