Ⅰ.多指症
多指症は指の重複を認める手の先天異常であり,母指多指症,小指多指症,中央列多指症に分類される.国際手外科学会連合改良分類法(手の先天異常分類マニュアル)では前者2つが「重複」に,後者1つが「指列誘導障害」に分類される.
●病態
・母指多指症:手の先天異常で最も発生頻度が高く,1,000出生に対して0.5~1人とされる.両側罹患は約10%で男児に多い.重複母指の分岐高位をX線所見に基づき分類をしたWassel分類が用いられる.1と2型は末節骨,3と4型は基節骨,5と6型は中手骨高位で分岐する.また,ぶらぶら母指は7型浮遊型,分岐部判定が困難な場合を8型その他とする.
・小指多指症:わが国では発生頻度が低いが,欧米で発生頻度が高く,家族歴を有する割合が高い.ほかの先天異常を高頻度に合併することが特徴である.多彩な表現型を呈することが多く,浮遊型とその他に分類する.
・中央列多指症:発生頻度は低く,両側罹患や家族歴を有する症例が多い.多彩な病態を呈することや,合指症や足趾の異常を合併することが多いのが特徴である.
●治療方針
手術は1歳頃に行う.過剰指の単純切除ではなく,温存指の機能再建を念頭においた手術が重要である.一方,浮遊型では生後6か月頃に単純切除を行う.中央列多指では複雑な病態を呈する場合が多く,手術方法や手術時期について慎重な検討を要する.
Ⅱ.合指症
合指症は指が癒合した状態を呈する比較的頻度の高い手の先天異常である(10,000出生に1.4~5人).「手の先天異常分類マニュアル」では「指列誘導障害」に分類される.
●病態
・癒合が皮膚に限局した皮膚性合指と,骨癒合を伴う骨性合指に分類される.
・癒合が指尖部までの完全合指と,指尖部は分離している不完全合指に区別する.両側罹患と中・環指罹患が多い.
●治療方針
手術は1歳頃に背側皮弁を用いた指間形成と,皮膚欠損部への全層植皮