治療のポイント
・すべての児に起こりうるため,予防的に「肛囲へ保護剤を塗布しておくこと」を勧める.
・白色ワセリンや亜鉛華(単)軟膏を用いて皮膚を保護し,ステロイド外用薬は使用しない.
・おむつ交換時の処置方法が重要なので,家族に詳しく説明する.
●病態
・おむつ皮膚炎は,排泄物で皮膚が長時間濡れたり,過度に擦れたりすることが要因となる.おむつ交換の頻度や下痢,抗菌薬内服のエピソード,基礎疾患などが関与する.
・排泄物が皮膚に長時間付着すると皮膚のpHが上昇し,便中のリパーゼやプロテアーゼが活性化され,角質が障害される.また排泄物により皮膚が濡れ続けると,角層が浸軟して角質細胞間脂質のラメラ構造が崩れ,皮膚が脆弱になりバリア機能の低下を引き起こす.これらによって,おむつ部に紅斑やびらん,潰瘍などが生じる.
・Jacquet erosive diaper dermatitisとよばれるおむつ皮膚炎の一型では,穿孔性の潰瘍やびらんが臀部に多発する.おむつを適切に交換されていない児のほか,腸管が短くなった状態の児,Hirschsprung(ヒルシュスプルング)病の術後患児など,慢性的な下痢や便失禁によって生じる.
●治療方針
A.皮膚の保護
予防のため,普段から保護剤を肛囲に外用しておく.クリームやローションの基剤では皮表への保護作用が不十分であり,またそれらに含まれる添加物が刺激となる場合もあるため,下記の油脂性軟膏〔白色ワセリンあるいは亜鉛華(単)軟膏〕を選択する.これらは日に何度も外用でき,新生児期からおむつ内に生じる間擦疹(鼠径部や陰嚢の下に生じる紅斑)にも同様の処置を行ってよい.
1.肛囲に皮疹を認めない場合
入浴後に白色ワセリン(プロペト)を塗布する.きれいな皮膚であれば1日1回の外用でよく,便の性状が軟らかくなるなどの変化があれば,おむつ替えのたびに複数回外用しても差しつかえない.
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