Ⅰ.汗疹
●病態
・衣類などで密封されるなど,皮膚表面が高温多湿な環境に長時間曝されることによって汗孔,汗管が閉塞し,汗が停滞することで生じる.
・閉塞部によって表現型が異なる.汗孔の閉塞は水晶様汗疹,上部表皮内汗管の閉塞は紅色汗疹,下部表皮内汗管の閉塞は深在性汗疹となる.
・特徴的な臨床症状,経過,出現時の状況から診断できる.
・黄色ブドウ球菌などによる二次感染を伴うことがあるので留意する.
●治療方針
通気性のよい肌着の着用など,皮膚が蒸れないよう配慮する.
薬物治療ではフェノール・亜鉛華リニメント,炎症の強い場合はミディアムクラスのステロイド外用薬を用いる.
治癒後に乏汗の傾向を示すことがあるため,室温や衣類を調節するなど体温管理に留意する.
Px処方例 瘙痒に対する対症療法として炎症に乏しい場合➊を,炎症を伴う場合➋を用いる.➊は少量の水で希釈して塗ると伸びやすい.
Ⅱ.汗腺膿瘍
●病態
・小児に好発する細菌性汗腺炎である.黄色ブドウ球菌あるいはレンサ球菌がエクリン汗腺に感染することで,半ドーム状に隆起する圧痛のない硬結と膿瘍が多発する.臨床像と貯留した膿のグラム染色像,細菌培養によって診断する.感染症が進展すると蜂巣炎を形成するほか,発熱やリンパ節腫大などの全身症状を呈することがある.免疫不全の存在に留意する.
●治療方針
グラム陽性球菌を標的とした抗菌薬の全身投与が行われる.大きな嚢腫を形成した場合は切開排膿を行う.洗浄剤を用いた洗浄により,皮膚の清潔を保つ.
Px処方例
(全身療法)下記➊➋のいずれかを用いる.
〔
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