診療支援
治療

小児ぶどう膜炎
juvenile uveitis
後藤 浩
(東京医科大学眼科学・主任教授)

●病態

・虹彩,毛様体,脈絡膜のいずれか,あるいはすべてに炎症が生じた際に用いられる病名であるが,眼内に生じた炎症はすべてぶどう膜炎(uveitis)とよぶ傾向にある.

・成人同様,小児ぶどう膜炎も原因は不明のことが多く,全体の50~70%は固有の診断名すらつけることができない.成人に多くみられるサルコイドーシス,Vogt-小柳-原田病も小児ではまれで,同定(分類)可能な疾患としては川崎病,若年性特発性関節炎(JIA:juvenile idiopathic arthritis),JIAのぶどう膜炎と同様の眼所見を呈しながら関節症状のない,いわゆるiridocyclitis in young girlsなどが代表的な疾患となる.

・成人のぶどう膜炎でも全体の15%程度にすぎない感染性ぶどう膜炎は小児ではさらにまれで,多くは非感染性の炎症である.

・小児ぶどう膜炎では症状の訴えは期待できず,充血を伴うことも少ないため,発見(診断)は遅れがちとなる.

●治療方針

A.活動性の眼内炎症に対する治療

 非感染性ぶどう膜炎に対する治療の中心は副腎皮質ステロイドであり,軽症例ではベタメタゾンなどの点眼薬を,中等~重症例ではプレドニゾロンの内服が行われる.年齢にもよるが,ステロイドの眼局所注射は,小児の場合は実施困難なことが多い.

 一般に虹彩毛様体炎(前眼部の炎症)のみの場合はステロイドの点眼と,虹彩後癒着防止目的に短時間作用型の散瞳薬の点眼を用いる.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)については点眼,内服ともにその効果はほとんど期待できない.

 副作用や何らかの理由によりステロイドの全身投与が不可の場合は,メトトレキサートの内服(保険適用外)や,JIAが背景にある場合にはTNF阻害薬などの生物製剤の導入を検討する.

B.眼内炎症が沈静化したあとの治療

 ステロイドは点眼,内服にかかわらず必要最小限の投与に

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