診療支援
治療

ロービジョンケア
low vision care
田淵昭雄
(川崎医科大学・名誉教授)

A.ロービジョンとロービジョンケアの概念

 小児のロービジョンは,生直後からあるいは後天性に視覚(視力,視野,色覚,光覚や固視・調節機能など)の障害が固定し,発育,学業や日常生活などに支障をきたしている.児は視器の機能的・形態的発達が遅れ,視覚情報不足による精神的・知的・身体的発達が影響を受ける.特に障害発生時の感受性は3歳までがきわめて大きい.

 小児のロービジョンケアは,視覚障害の原因疾患,障害児の年齢,障害期間,視覚情報の有無,家庭環境などを考慮した支援である.乳児では保育,幼児では自立,社会性,就学前の教育,学童児では学業とコミュニケーション能力形成,進学や就職の指導を行うなど,療育(ハビリテーション)といえる.

B.ロービジョンケアの実際

1.視覚障害の原因疾患との関連

 原因の43%は先天異常による小眼球(無眼球も)や各種網膜症などで,19%は未熟児網膜症である(1,000g未満の超低出生体重児の生存率が高くなり,重篤な網膜症の発生がある).

 次いで先天白内障,先天緑内障や網膜芽細胞腫などである.これらの児には早くから外界から(音や接触など)の適切な刺激が必要で,目からの情報不足を補うことが重要である.

2.家庭環境との関連

 障害児を育てる保護者の責任は大きい.「見えないから可哀想」と習得すべき食事,排便,運動,学習や精神活動など,すべてを保護者が身代わりになる「過保護」あるいは「あきらめて放置」するのは避けたい.関係者は子どもの性格を知り能力を信じて,安全な環境とほかの子ども(晴眼児も含め)とのコミュニケーションの場を提供する.

3.保育との関連

 就学前には自立し,子どもに社会性をもたせるために可能な限り近隣の保育所にも通わせる.しばしば医師(眼科医がよい)が児は何ができるかを保育所に伝え,間を取りもつとよい.最近は盲学校(特別支援学校)が相談に乗ってくれ,保健所が視覚障害

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