診療支援
治療

心因性視覚障害
psychogenic visual disturbance
木村亜紀子
(兵庫医科大学眼科学・准教授)

●病態

・精神的ストレスなどが原因となって視力検査ができない状態を指し,器質的な疾患を認めない.学校健診などの視力検査がきっかけで発見されることが多い.

・携帯やテレビを見たり食事をしたりなど,日常生活で不便を感じているような素振りを認めることはないが,いざ視力検査となると裸眼視力が0.1~0.2などきわめて不良で,日常生活の態度と視力測定の結果に乖離を認める.

・小児期や思春期に多くみられ,女児が男児より2~4倍多い.一般的に両眼性で半年から1年で改善し,予後は良好とされている.

・視力障害で発症することが最も多いが,視野障害(求心性視野狭窄,らせん状視野,管状視野など),色覚異常,調節麻痺などを訴えることもある.

●治療方針

 実際は器質的疾患が潜んでいたにもかかわらず,安易に心因性視覚障害と診断しないよう注意を要する.眼球・視神経・視交叉・視索・外側膝状体・視放線・後頭葉といった視路に障害がないことの確認は必ず行う.心因性視覚障害の視力検査の特徴として,視力検査時に+1Dのレンズを負荷し,次いで-1Dのレンズを負荷することで(結局は負荷なし)視力が1.0となることが多く(レンズ打消し法),屈折異常がなくても眼鏡装用することで精神的な負担が軽減し,視力の向上が認められることがある.「眼鏡をかける」ことは副作用のない,最も簡便で最初にトライしてみる価値のある治療法である.また,小児では「眼鏡をかけてみたい」という思いが原因となっていることもある.

A.原因が特定されるもの(転換型)

 一般的に,精神的葛藤や欲求不満などの精神的ストレスを感じたときに起こりやすいとされる.「友人関係」としては引っ越しや学校でのいじめなど,「兄弟・親子関係」としては両親の離婚や弟や妹の出生による母親の関心の薄れなど,「教育や親子関係」ではどうみても活発な男の子が親の意向でバイオリンを習わされているなど過度な塾

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