診療支援
治療

小児眼外傷
ocular trauma among children
林 英之
(福岡大学総合医学研究センター・教授)

●病態

・外力によって眼球もしくは眼球付属器,眼窩組織が損傷したものを眼外傷という.最も多く,かつ高度の障害を残す例が多いのは直達,介達の物理的外力による損傷であり,一般に眼外傷とはこれをいう.

・重篤な眼外傷の35%は小児であり,12歳未満に多く,特に5歳未満は高リスクである.受傷原因は遊びやスポーツで,成人の監視下にない場合の受傷が多い.片眼がほとんどである.

・眼球外傷を以下のように分類する(バーミンガム眼外傷用語規定).

 a)閉鎖性眼球損傷:眼球壁に全層裂傷がない

 b)眼球振盪:まったく裂傷がない

 c)眼球表層裂傷:全層にいたらない裂傷

 d)開放性眼球損傷:眼球壁の内外に連なる全層裂傷

 e)眼球破裂:鈍的損傷による眼圧上昇のため眼球壁が断裂し,眼球内容の脱出と嵌頓

 f)眼球裂傷:鋭的物体により全層開放創が形成

 g)眼球穿通:刺入創だけで刺出創がない

 h)眼球穿孔:刺入部と刺出部を伴う

 i)眼球内異物:眼内に異物が滞留

●治療方針

A.診断

 3歳までは周囲の成人がみていなければ外傷自体がわかりにくい.また6歳までは受傷状況を説明できないことが多い.常により重篤な損傷の可能性を念頭におく必要がある.また他人による打撲や受傷を患児自身が否定する場合がある.

 受傷直後には疼痛に加えて恐怖や心理的パニックのために視力検査や眼圧測定など行えない場合がある.その際には鎮静や全身麻酔下での他覚的検査,特にX線CTや超音波Bモードなどの画像検査が有用である.また開放性眼損傷では,涕泣や体動により眼球内容がさらに脱出して重症化することがあるので,少しでも疑われるのならば鎮静・麻酔を行う.

 上眼瞼挙筋断裂による眼瞼下垂や眼瞼出血・腫脹,前房出血,外傷性白内障,硝子体出血などで数週間以上光路がふさがれると,小児では視性刺激遮断弱視に陥りやすいので早急な対策を心がける.

B.治療

1.前房出血

 虹彩損傷や

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