Ⅰ.先天性耳瘻孔
●病態
・日常臨床でよくみられる外耳の先天異常で,耳介やその周囲に存在する瘻孔である.わが国での発生頻度は1~2%程度とされる.外耳は中耳とともに,第1および第2鰓弓由来である.この2つの鰓弓の間に計6つの小隆起が形成され,それらが癒合して耳介の凹凸ができあがるが,この過程での癒合不全により生じる.
・片側性が多い.瘻孔の部位は,前耳輪部,次いで耳前部,耳輪脚基部に発生頻度が高い(これらで全体の約9割を占める).
●治療方針
1.感染を起こさない場合
多くは無症状であり,経過観察でよい.
2.感染を起こした場合
瘻孔周囲が発赤・腫脹し,さらに増悪すると膿瘍を形成する.抗菌薬を投与し局所処置を行う.炎症が高度で腫脹や疼痛が強い場合は,膿瘍の切開・排膿も行うことがある.
■専門医へのコンサルト
・感染を繰り返す症例には,根治のために瘻管の全摘出が適応となる.
・感染が生じているときは,可能な限り消炎後に手術を行う.瘻管の取り残しは再発につながるため,確実な追跡が必要である.
Ⅱ.耳介奇形
●病態
・耳介は第1・第2鰓弓由来の耳介小丘から,外耳道はこれらの間に生じる第1鰓溝から形成され,この発生過程での形成不全が原因とされる.耳介奇形の種類は多岐にわたり,その形態異常・程度は多彩である.奇形が強く外耳道閉鎖を伴うことのある小耳症や無耳症(Ⅲ.を参照)から,耳介軽度変形のみで難聴を伴わない副耳,埋没耳(袋耳),カップ状耳,耳垂裂などがある.
・わが国で頻度の高い副耳は約1.5%とされる.難聴を伴う可能性の高い小耳症は5,000人に1人程度で,性差は男性の患側は右耳に多く,両側性は8%と少ない.
●治療方針
1.一側性の場合
整容的加療を希望するときには専門医にコンサルトする.
2.両側性の外耳道閉鎖(鎖耳)を伴う小耳症の場合
a)外耳道閉鎖による難聴は40~60dB程度の伝音難聴であり,言語発達