診療支援
治療

感音難聴(人工内耳,補聴器)
sensorineural hearing loss(cochlear implant,hearing aid)
新田清一
(済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科・主任診療科長)

治療のポイント

・感音難聴は早期発見・診断・療育が重要であるため,疑われた場合は地域の精密聴力検査機関の耳鼻咽喉科にすみやかに紹介する.

・両側中等度(40dBHL)以上の難聴がある場合は,補聴器装用による補聴療育を行う.

・両側重度難聴(90dBHL以上)の場合は,まず補聴器装用を行うが,効果が不十分の場合には人工内耳を検討する.

・補聴器および人工内耳装用児に対しては,適切な療育(装用指導,言語訓練,生活指導など)が必要不可欠である.

●病態

・先天性感音難聴の原因の約60~70%は遺伝性難聴,残りの30~40%が非遺伝性難聴(感染・外傷・薬物などの環境要因)による.そのほとんどが内耳性難聴である.

・遺伝性難聴のうち約30%は「症候群性難聴」であり,難聴に加えほかの症候を伴う多くの疾患群が知られている.残りの70%は難聴のみが症状である「非症候群性難聴」である.日本人においては,GJB2SLC26A4CDH23遺伝子など,常染色体劣性遺伝形式をとる原因遺伝子の頻度が高い.

・非遺伝性難聴では,先天性サイトメガロウイルス感染による難聴が多い.

●治療方針

 先天性,または乳幼児期から高度以上の難聴が両耳にあると言語発達に必要な音声情報が制限され,音声言語獲得に支障をきたし,発語・発音不明瞭な言語障害,言語発達遅滞,言語力低下が生じて社会への適応困難につながる.よって早期発見(生後1か月までの聴覚スクリーニングの終了),3か月までの早期診断,6か月までの早期療育が望ましい.

A.補聴器

 難聴と診断された児については,その原因,両側性か片側性か,難聴の程度や合併症の有無に応じて治療を検討する.両側に中等度以上(40dBHL以上)の難聴が認められれば言語発達に影響を及ぼすために,補聴器装用を積極的に勧める.

 両側重度難聴(90dBHL以上)の場合は,補聴器では十分に聴覚補償をできないことも多い

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