診療支援
治療

新生児聴覚スクリーニング
newborn hearing screening(NHS)
深美 悟
(獨協医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科・准教授)

A.聴覚スクリーニングの普及

 過去の小児難聴診療においては,保護者が「音の反応に乏しい」「言葉が出ない」「同年代の児と比べて語彙数が少ない」などに気づき,わが子が難聴ではないかと心配して耳鼻科施設を受診することが多かった.母国語の言語習得には3歳までが重要であるために,難聴と診断されたときには2歳を過ぎていることが多く,言語発達のみならず,コミュニケーション,行動や感情,性格,学習能力に悪影響を及ぼす.

 療育が必要な中等度以上の両側難聴の発生頻度は,1,000人に1人とされる.欧米では1993年の自動ABRの製品化と「生後3か月以内に全新生児にスクリーニングを行い,6か月以内に療育を開始する」との米国衛生研究所の勧告後,新生児聴覚スクリーニング(NHS)が普及した.

 わが国では,1998年に厚生科学研究の「新生児期の効果的な聴覚スクリーニング方法と療育体制に関する研究」後,岡山県,秋田県,栃木県でモデル事業が行われ,全国でNHSが行われるようになった.現在では94.3%の施設で施行されている.

B.NHSの実際

 生後まもなく,産科施設において希望者に自然睡眠下で検査を施行する.検査機器には自動ABRとDPOAE(distortion product otoacoustic emissions,非歪成分耳音響放射)の2種類があり,前者では装着するイヤカプラがディスポで高価であること,後者では外耳の胎脂や中耳の貯留物の影響を受けやすいことがあげられる.

 検査結果は「pass」が合格,「refer」が不合格で,「refer」は難聴の疑いを意味する.少なくとも2回以上「refer」となったときには,指定された耳鼻咽喉科施設に紹介する(日本耳鼻咽喉科学会ウェブサイトの精密聴力検査機関リストを参照:http://www.jibika.or.jp/citizens/nanchou.html

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