診療支援
治療

心因性難聴
psychogenic hearing loss
石川浩太郎
(国立障害者リハビリテーションセンター病院第二耳鼻咽喉科・医長)

●病態

・心因性難聴とは,日本耳鼻咽喉科学会による学校医のための対応指針で,①器質的疾患がないか,あるいはあっても本症状の原因ではない,②難聴の症状はないことも,あることもある,③標準純音聴力検査では聴力レベルが必ず異常値を示す,④発症の背景に心理的要因があるもの,と定義される疾患である.心因性難聴は小児,特に女児に多く好発年齢は10歳前後である.

・難聴は両側性が多いが一側性の場合もある.聴力型は水平型が多く,難聴の程度は軽度から重度までさまざまである.検査に時間がかかり,検査結果がばらつくのが特徴である.

・診断は心因性難聴を疑うところから始まる.診察の際に標準純音聴力検査の結果と比較して,会話に問題がないことに違和感を覚えることが重要である.いくつかの検査を組み合わせて診断に至るが,自覚的検査と他覚的検査の乖離を確認することが重要である.聴性脳幹反応検査(ABR:auditory brainstem response)や聴性定常反応検査(ASSR:auditory steady state response)を行い,結果から推測される聴力閾値を確認するのが最も確実な検査法である.このほかに歪成分耳音響放射検査(DPOAE:distortion product otoacoustic emission)や耳小骨筋検査(SR:stapedius reflex)で正常反応が得られること,自記オージオメトリでJerger V型が得られることも診断の根拠となりうる.

●治療方針

 一般的な耳疾患による難聴の治療は効果が得られない.発症の背景に強い心理的背景がない場合は,病態を説明して経過観察することで自然に改善する場合が多い.

 一方,病歴聴取において背景に強い心理的背景が疑われる場合は,耳鼻咽喉科のみで対応することが難しい場合が多く,児童精神科医や精神科医,臨床心理士などに協力を要請し,

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