●病態
・ヒトは主に3種類の感覚入力(視覚,前庭覚,体性感覚)を利用して体平衡を維持している.動揺病とは,この感覚入力間の乖離やそれによる認知座標系・空間識の不安定化が視床下部や大脳辺縁系を介して自律神経反射(吐き気,嘔吐,頭痛やめまい,唾液分泌亢進,血圧上昇や低下など)を引き起こす状態を指す.
・内耳疾患などで前庭覚入力に障害がある場合,特にほかの感覚入力との間の乖離や空間認知の精度低下が起こりやすく,動揺病が発症しやすくなるとされる.
・車酔いは,加速・減速・カーブなどの加速度変化を予測しにくい同乗者が本やスマートフォンなどを見ていると,前庭覚や体性感覚への加速度の入力と視覚入力との間の乖離が大きくなり発症する.車内の悪臭や不快な温度・湿度,さらに精神的な不安なども発症要因となる.
・船の中では常に低周波数の揺れが体性感覚より入力されているが,これは視覚では感受されにくい.また波の高い状況下で