診療支援
治療

小児の補聴器装用とフィッティング
工 穣
(信州大学耳鼻咽喉科学・准教授)

A.難聴診断後の障害認定と補聴器交付申請

 BOA(聴性行動反応聴力検査),COR(条件詮索反応聴力検査),ASSR(聴性定常反応)などにより推定された患児の聴力閾値が,会話音域が不十分となる40dB平均程度以上であれば補聴器装用を勧める目安となる.

 70dB平均以上であれば,身体障害者福祉法に基づいて聴覚障害認定(身体障害者手帳の申請)を行う.ただし乳児の場合には聴力の確定が困難であり,病状進行による聴力閾値上昇や,髄鞘化の改善による閾値改善などがあり得るため,認定は常に慎重であるべきである.たとえABR(聴性脳幹反応検査),ASSRでまったく反応がなくとも,生後6か月時点ではひとまず3級や4級で認定し,その後の経過や再検査結果をふまえて3~6歳頃に再認定を行うのが望ましい.ただし,障害認定や後述する補装具費支給にはそれぞれ1か月前後を要するため,補聴器の仮装用を行いながら並行して申請を進めるのが望ましい.

 身体障害者の認定に引き続き,障害者総合支援法に基づいて補装具費支給意見書を作成する必要がある.原則的に2級と3級には重度難聴用,4級と6級には高度難聴用の補聴器購入費用基準額(表1)が支給され,1割が自己負担となっている.言語習得や学業が目的である乳幼児や学童に対しては,両側分を支給する自治体がほとんどである.

B.軽度・中等度難聴児に対する補聴器装用と助成について

 平均聴力レベルが70dB未満である軽度・中等度難聴児でも,放置すれば徐々に言語発達の遅れが出現し,学童期以降には学力や社会生活に支障をきたすとされており,言語力や学力を評価したうえで補聴器装用や教育的介入が必要となる.ここ数年間に,都道府県や市町村単位で軽度・中等度難聴児に対する補聴器購入助成事業が開始され,全国の自治体に広まりつつある.助成金額はそれぞれ異なるが,障害者総合支援法による高度難聴用補聴器の基

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