診療支援
治療

言語発達障害
speech or language impairment
宇高二良
(宇高耳鼻咽喉科医院・院長(徳島))

●病態

・言語とは意思伝達と思考のための共通の符号体系である.日本人であれば日本語という符号を使って,他者との意思の伝達をはかるとともに,複雑かつ抽象的な思考を行っている.小児ではさらに自己の行動の調整機能もある.

・おおよそ5歳までに基本的な言語構造を獲得するが,それまでの発達過程において言語能力が年齢相当の水準に達していない場合を言語発達障害という.言語発達に遅れがあると,表面上は他者とのコミュニケーションのための発語がない,行動にまとまりのないことなどがみられるが,裏面には思考過程の未熟さが伴っていることを念頭においておく必要がある.

・近年の少子化,核家族化などの影響もあって,頼るべき祖父母がおらず初めて子どもを育てるような保護者にとって,言語発達障害を認識することは困難なことが少なくない.言語発達障害は乳幼児健診でのチェックや,保育園や幼稚園などの保育機関での担当者の目を通して,医療機関に紹介されることがほとんどである.

●治療方針

A.診断

 言語発達障害はいわば症候であり,多くの場合背景には原因となる疾患が存在している.代表的なものとしては,①知的障害,②自閉スペクトラム症,③聴覚障害,④特異的言語発達遅滞などがあげられる.このうち中高度の聴覚障害では対応の時期によって予後が異なるため,可及的早期の診断と対応が必要である.

 聴覚障害を否定したあとに,知的障害,自閉スペクトラム症などとの鑑別を進めることになる.乳幼児健診でいえば,遅くとも1歳6か月児健診までに聴覚障害は確定させるとともに,知的障害や自閉スペクトラム症についてはその存在を疑い,3歳児健診までには診断と対応が望まれる.言語発達障害では,対応の遅れがあると社会的不適応などの二次障害が生じるため,就学間近の5歳児健診や就学時健診での発見では対処が難しいことがある.

B.治療

 対応方針のうち,聴覚障害に関しては滲出性中

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