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治療

歯の発育と萌出
teeth development and eruption
福本 敏
(東北大学大学院小児発達歯科学・教授,九州大学大学院小児口腔医学・教授)

 歯の萌出は生後8月前後より下顎乳前歯から開始し,3歳頃までに20本の乳歯が萌出する.

 永久歯は,下顎中切歯あるいは第一大臼歯(6歳臼歯)が6歳頃より萌出し,12歳頃までに28本が萌出する.第3大臼歯(親知らず)は,18歳前後で萌出するが,先天欠如や埋伏することもある.この第3大臼歯も含めると永久歯は32本となる.

 形成や萌出に何らかの障害を生じた場合に,歯の発育異常あるいは萌出異常となる.


A.歯の発育異常

1.歯の先天欠如

 多数歯の欠損に関しては,外胚葉異形成症などの全身的な要因があげられる.また一部の歯に限局した欠損(側切歯,第二小臼歯,第三大臼歯など)に関しては約10%の頻度で認められる.

2.過剰歯

 通常の歯数よりも多く歯が存在することをいう.上顎の正中部に認められることが多く(次いで小臼歯部),口腔内に萌出するものや埋伏するものがある.多数の過剰歯を生じる疾患として鎖骨頭蓋異形成症があげられる.

3.癒合歯

 複数の歯が癒合したものをいう.乳前歯部に多く認められる.癒合した部分に溝を生じるため齲蝕に罹患しやすいこと,永久歯との交換がうまくいかないことがある.乳歯に癒合歯が認められた場合,約40%の頻度で後継永久歯先天欠如が認められる.

4.歯の形態や質の異常

 歯の形成期に何らかの異常を生じた場合に,歯の形態に異常を生じる.本来より小さい歯(矮小歯)や異常な結節や突起を有するものもある.放射線治療や抗がん剤の治療の影響,妊婦の梅毒や風疹などの感染により歯の形態異常を示すこともある.またエナメル質や象牙質の形成異常を生じた場合には,歯の色調異常を示すとともに齲蝕に罹患しやすい.テトラサイクリンなどの抗菌薬も,歯の形成期に投与することで歯の変色をきたす.その他,先天性胆道閉鎖症,新生児メレナにおいて歯の色調異常を示すことがある.

B.歯の萌出の異常

1.先天歯

 出生時あるいは出生後数

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