診療支援
治療

歯冠の修復
tooth restoration
木本茂成
(神奈川歯科大学大学院小児歯科学・教授)

 齲蝕や外傷,形成不全などにより実質欠損の生じた歯や形態異常歯に対して,各種歯科材料を用いて解剖学的な形態と機能の回復をはかるための処置である.

 小児歯科においては,成長発育期の健全な歯列・咬合の確立のみならず,咀嚼機能,嚥下機能,構音機能など健全な口腔機能の獲得と審美性の回復を目的として高頻度で行われる.

 乳歯列期においては,感染歯質の除去とともに口腔清掃指導を行い,口腔内環境を改善することにより永久歯の齲蝕罹患の危険性を低下させる意義を有する.


●治療方針

 実質欠損の範囲に応じて歯の切削を行い,適切な材料を用いて歯の解剖学的形態を回復する.実質欠損を伴わない齲蝕による歯質脱灰(白斑)については,エナメル質の再石灰化を期待するため,歯冠修復処置の対象としない.MI(minimal intervention,最小の侵襲)の観点から,必要最小限の歯質の削除に留めることが必要である.

 乳歯の場合,一般的に前歯,臼歯を問わずコンポジットレジンによる形態の回復をはかることが多いが,臼歯部において実質欠損の範囲が多歯面に及ぶ場合や咬頭を含む場合には,乳歯用既製金属冠を装着する.

 幼若永久歯の場合,前歯部では審美性を考慮してコンポジットレジン修復を行い,臼歯部では必要最小限の範囲で罹患歯質の除去を行った後,コンポジットレジンあるいはグラスアイオノマーセメントによる暫間的歯冠修復処置を施す.歯列・咬合の完成後に各種歯科用修復材料による永久修復を行う.

A.除痛法

 象牙質に達する実質欠損がある場合には,切削時の疼痛を軽減するため,表面麻酔ならびに浸潤麻酔を施すことが必要である.

B.ラバーダム

 施術中に唾液や呼気を遮断し,修復材料の歯質への接着効果を向上させること,さらに口腔軟組織の損傷を防止し,各種薬剤や材料の誤飲・誤嚥を防ぐ目的で対象歯以外をラバーシートで排除するラバーダムを患歯に装着する.

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