診療支援
治療

歯列と咬合の異常
anomalies of the dentition and occlusion
尾崎正雄
(福岡歯科大学成育小児歯科学・教授)

●病態

・小児における歯列発育は,顎の発育とともに10数年あまりで乳歯列,混合歯列,永久歯列へと変化する.その間に,種々の内部要因,外部要因が原因となり咬合異常が起こってくる.近年,口腔機能の問題が取り上げられているが,咬合の完成にも口腔機能が大きくかかわっていることが知られている.

・歯列不正の原因は大きく3つに分かれる.形態的な問題,口腔機能の問題そして齲蝕の問題である.これら3つの問題が,単独または関連しあって起こってくる.最も歯列と咬合の形成に影響を与えていると思われる原因から除去または治療していくのが常套手段である.小児期において歯列および咬合異常を治療することを咬合誘導という.

・一般に知られている矯正歯科治療は歯列異常や咬合異常に対して,審美的,機能的に歯列形態を修正していくものであるが,咬合誘導では,歯列あるいは咬合の発育段階でみられる初期異常を修正して正常な永久歯萌出や顎の成長へと導こうとするものである.しかし小児の歯列や咬合の異常を正確に把握し,将来の予測を行うことは,分析技術と経験が必要である.

●治療方針

1.一般的な叢生患者の口腔内

図1) 本症例は,永久歯萌出を開始して1年あまりを経過しているが,前歯部に歯列不正の徴候が認められる.これは歯槽骨と歯の大きさの不調和による歯列不正が原因で起こっている.しかし歯列の形態は舌筋群と口輪筋,頬筋とのバランスで形成されるため,口腔機能の異常も原因として考えられる.近年,子どもたちの食形の軟食化傾向が著しく,歯列を取り巻く筋肉のバランス乱れが歯列異常を起こしている.治療方針は,前歯部の叢生量によって異なり,歯の配列に必要な空隙が明らかに不足している場合,小臼歯を抜歯して歯列矯正を行う必要がある.

2.異常嚥下癖による咬合異常

図2) 嚥下時に舌が突出するので上下前歯がかみ合わず開咬状態となっている.嚥下の発育は,舌を

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