咬合誘導とは,歯,歯列,顎骨,口腔周囲筋の調和を保ち,健全な歯列・咬合と口腔機能の成長発達をはかることである.歯列・咬合の成長発達に障害となる因子を予測し早期に取り除くこと,さらに成長発達の過程で生じる異常を早期に発見し,適切な処置を行い,健全な歯列・咬合と口腔機能の獲得をはかる.静的(受動的)咬合誘導と動的(能動的)咬合誘導に大別される.
●治療方針
A.歯列・咬合および顎顔面の診察と分析
a)口腔内診察:齲蝕,歯数,歯冠形態,萌出状態,軟組織などを行う.
b)模型分析:歯,歯列弓,歯列基底部の大きさ,咬合分析などを行う.
c)空隙分析:永久側方歯群の萌出余地の予測を行う.
d)画像分析:デンタルX線写真,パノラマX線写真,CT,頭部X線規格写真などを用いる.
B.静的(受動的)咬合誘導
乳歯の早期喪失により生じた空隙を,近遠心的・垂直的に保持(保隙)するために保隙装置を装着し,永久歯の萌出を正常に誘導する.
1.片側性第一乳臼歯1歯のみの早期喪失
第二乳臼歯の近心移動を防止するために,クラウン(バンド)ループを装着する.適応期間は乳歯列期~小臼歯萌出期までである.
2.第一大臼歯萌出前の片側性第二乳臼歯の早期喪失
第一大臼歯の近心移動を防止するためにディスタルシューを装着する.適応期間は乳歯列期~第一大臼歯萌出期である.第一大臼歯萌出後は,第一乳臼歯を支台としたクラウンループや,第一大臼歯を支台としたバンドループなどに変更する.
3.同顎2歯以上の乳臼歯の早期喪失
第一大臼歯の萌出前は可撤保隙装置(小児義歯)を装着する.第一大臼歯の萌出完了時は可撤保隙装置,上顎ではNance(ナンス)のホールディングアーチ,下顎ではリンガルアーチを装着する.適応期間は乳歯列期~小臼歯萌出期までである.
4.乳前歯の早期喪失
可撤保隙装置を装着する.適応期間は乳歯列期~前歯萌出期までである.構音や咀