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治療

上唇小帯,舌小帯の異常
abnormal frenulum of upper lip and tongue
河上智美
(日本歯科大学小児歯科学・准教授)

 口腔には,上唇小帯や舌小帯,口唇小帯,頬小帯とよばれる粘膜のヒダ状構造物が認められる.小帯における異常には,形態と付着位置によるものがあるが,形態異常によるものは少なく,ほとんどが付着位置異常に起因してさまざまな症状を呈する.小児期の小帯異常では,上唇小帯と舌小帯に多く認められるため,この2つにおける病態と治療方針について述べる.

Ⅰ.上唇小帯の異常

●病態

・上唇小帯は,出生時には口蓋側の切歯乳頭につながっているが,歯槽部の発育と乳歯萌出に伴い徐々に退縮して細く薄くなり,上方へと付着位置を変化させる.さらに永久歯の上顎中切歯萌出後には,歯槽部の低位に付着するようになる.

・この正常な退縮過程をたどらずに,付着位置異常や肥大を呈したものを上唇小帯の異常という.

●治療方針

 問題点としては,歯の萌出および位置異常,正中離開,審美障害,上唇小帯付近の歯面清掃困難,齲蝕および歯肉炎の誘発,発音障害,咀嚼障害および口唇の運動障害などがあげられる.上唇小帯の位置や形状の変化は継続的に行われるので,これに関した重度の障害,異常がなければ上顎永久中切歯萌出以降まで経過観察を行う.

 永久前歯の歯列不正には過剰歯や習癖,側切歯の欠損などのほかの原因で生じている場合もあり,上唇小帯の切除を優先するのではなく,その他の原因を考慮して手術を検討する必要がある.手術が必要か否かは年齢,小帯の形態・付着位置,小児の心身状態などを十分考慮して判断する.上唇小帯の付着位置を確認する方法として,視診のほかにBlanch(ブランチ)テスト(上口唇を手指で上方に牽引すると付着部の歯肉が白くなる.小帯付着部の貧血帯の範囲で口蓋部まで波及しているか判定する)がある.

Ⅱ.舌小帯の異常

●病態

・舌小帯は,新生児では成人に比べ短く舌尖部付近に付着しているが,成長発育に伴って舌尖部から徐々に短縮し膜状となり,後方へと退縮しながら付着

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