口腔には,上唇小帯や舌小帯,口唇小帯,頬小帯とよばれる粘膜のヒダ状構造物が認められる.小帯における異常には,形態と付着位置によるものがあるが,形態異常によるものは少なく,ほとんどが付着位置異常に起因してさまざまな症状を呈する.小児期の小帯異常では,上唇小帯と舌小帯に多く認められるため,この2つにおける病態と治療方針について述べる.
Ⅰ.上唇小帯の異常
●病態
・上唇小帯は,出生時には口蓋側の切歯乳頭につながっているが,歯槽部の発育と乳歯萌出に伴い徐々に退縮して細く薄くなり,上方へと付着位置を変化させる.さらに永久歯の上顎中切歯萌出後には,歯槽部の低位に付着するようになる.
・この正常な退縮過程をたどらずに,付着位置異常や肥大を呈したものを上唇小帯の異常という.
●治療方針
問題点としては,歯の萌出および位置異常,正中離開,審美障害,上唇小帯付近の歯面清掃困難,齲蝕および歯肉炎の誘発,発音障害,咀嚼