●病態
・顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節(雑)音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である.その病態は咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,顎関節円板障害および変形性顎関節症である.
・顎関節症の病因,発症メカニズムは不明なことが多い.日常生活を含めた環境因子,行動因子,宿主因子,時間的因子などの多因子が積み重なり,個体の耐性を超えた場合に発症するとされている.20代で増加し,40代まで比較的高い有病率を維持する疾患である.小児では低年齢での発症は限られており,その後増齢的に発症頻度が増加し,高校生以降有意に女性に多く発症する.
●治療方針
A.疾患の分類
診断基準により基本的に4つに分類される.
a)咀嚼筋痛障害:顎運動時,機能運動時あるいは非機能運動時に惹起される咀嚼筋の疼痛に関連する障害.
b)顎関節痛障害:顎運動時,機能運動時あるいは非機能運動時に惹起される顎関節の疼痛に関連する障害.
c)顎関節円板障害:円板転位,円板変形,円板重畳,円板穿孔など.
d)変形性顎関節症:下顎頭と下顎窩,関節隆起の軟骨,骨変化を伴う顎関節組織の破壊を特徴とする退行性関節障害.
このほか精神的な要因があるともいわれる.
B.治療
顎関節症の自然経過を調べた研究では,時間経過とともに改善し治癒していく疾患であることが示されている.また患者の自覚症状は,保存的治療によって良好に緩和することが多い.疫学的には多くの徴候と症状は一時的で,基本的に治療をしなくても長期的には症状が落ち着いたり治まったりする性質の疾患である.基本治療とは疾病自体や病態の説明,疾患教育やセルフケア指導である.
小児の発症は成人と異なり,外傷や口腔に関する習癖が原因となることもある.咀嚼筋,顎関節に強い痛みを訴える場合は,抗炎症薬による疼痛軽減をはかり経過をみる.さらに病態別に理学療法や薬物療法,そしてアプライアンス療