診療支援
治療

口臭
halitosis,breath odor
香西克之
(広島大学大学院小児歯科学・教授)

●病態

・成人と比べ小児の口臭はその発生頻度は圧倒的に低く,しかも本人の自覚よりも親が気にして来院するケースが多い.口臭は医学的には口臭症と称し,国際分類されている(表1).このうち真性口臭症は,生理的口臭と病的口臭に分けられる.

・主要な口臭成分は揮発性窒素化合物(VSC:volatile sulfur compounds).硫化水素,メチルメルカプタン,ジメチルサルファイドの3種類である.

・生理的口臭は起床時に生じやすい.睡眠中は唾液分泌がほとんどないため,口腔内が乾燥しやすく口腔細菌が増殖しやすい.特に口呼吸の小児では著しい.舌の汚れ,すなわち舌苔も口臭の原因となる.

・口腔由来の病的口臭の原因には,主に齲蝕,歯肉炎,歯周炎など細菌性の主要な口腔疾患があげられる.口腔細菌が増殖し,歯垢や歯石が生成され,歯面にバイオフィルムとして付着するがこれも口臭の原因となる.

・扁桃部に生じる膿栓は細菌性の膿が固まったもので,強い臭いをもつ.

・病的口臭の全身由来の原因疾患としては,①鼻炎,副鼻腔炎,②風邪などの発熱性疾患,③下痢・便秘などがあげられる.

・小児糖尿病ではアセトン臭,肝機能あるいは腎機能に障害があるとアンモニア臭が生じることがある.

●治療方針

 医療面接では,誰が口臭に気づいているか,口臭に気づく時間帯,食生活の内容,歯口清掃の有無,口呼吸の有無などを保護者や本人に尋ねる.また口腔内状態を精査し,齲蝕,歯肉の診査を行う.

 口臭の客観的評価は口臭測定器を使用する.患児の口腔内の呼気を採取し,主要3種類の口臭成分の濃度を測定し基準値と比較することによって判定する.メチルメルカプタンが基準値より高い場合,歯周病の疑いがあるが小児ではまれである.ほかの2種類が基準値より高い場合は体調の変化が原因と考えられる.いずれの成分も基準値以下の場合は,問題なしと判定される.

 病的口臭の原因が特定

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