診療支援
治療

口唇裂,口蓋裂
cleft lip and/or palate
白川哲夫
(日本大学小児歯科学・教授)

●病態

・口腔および顎に発生する先天性の形態異常では,口唇裂と口蓋裂が最も頻度が高い.口唇裂は上唇,口蓋裂は口蓋に発生し,口蓋裂では口腔と鼻腔が口蓋の裂け目で交通している.口蓋裂はないが上顎の歯茎が裂けている場合は顎裂という.また一見,口蓋に裂け目がみられなくても,軟口蓋部の筋が断裂しているものがあり,これを粘膜下口蓋裂という.

・これらの異常はしばしば合併する.口唇裂と顎裂が合併したものを唇顎裂,顎裂と口蓋裂が合併したものを顎口蓋裂,口唇裂,顎裂,口蓋裂が合併したものを唇顎口蓋裂という.日本人に多いとされており,約500人の出産に対し1人の割合でみられる.

・病因として,妊娠初期における胎児への外力,母体の栄養障害,薬物の影響,ウイルス感染などがあげられている.また一部では遺伝が関与しているものもあるが,大多数は原因が不明である.ほかの先天異常の合併率は10~20%である.

●治療方針

 単に披裂を閉鎖するだけでなく,機能的にも,また社会的にも良好な生活が送れるよう目標を設定し,適切な時期に手術や処置を行っていく必要がある.また本人や保護者に心理的な負担を生じやすいため,精神面への配慮も必要である.

 治療としては,発育に応じた患部領域の外科手術が必須である.手術は口腔外科医あるいは形成外科医が担当するが,小児歯科医などによる口腔衛生管理と摂食機能改善のための処置や指導,歯科矯正科医による歯列・咬合の改善,言語聴覚士による発音訓練なども重要であり,成人に達するまで複数の専門的職種がかかわっていく必要がある.

A.哺乳機能の改善

 出生直後から哺乳障害がみられる.口蓋裂や唇顎口蓋裂があると口腔内を陰圧にすることが難しく,哺乳が困難になりやすい.口蓋裂部を覆うよう設計した哺乳床〔Hotz(ホッツ)床〕を装着することで哺乳機能の改善をはかる.Hotz床によって口腔周囲筋が正常に活動しやすくなる

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