診療支援
治療

障害児の歯科治療
dental treatment for disabled children
内川喜盛
(日本歯科大学附属病院小児歯科・教授)

●病態

・医学的,身体的,精神的もしくは情緒的な能力障害がある障害児は,口腔衛生の維持や通常の歯科医療の受診にあたり以下の問題点がある.

 a)歯科医療への協力性の問題:知的能力障害や発達障害などにより患児の理解やコミュニケーションが困難な場合や,視覚・聴覚障害による情報伝達が難しい場合

 b)運動・姿勢制御の問題:脳性麻痺,筋ジストロフィー,脊髄損傷などがあり身体の静止,姿勢保持,動作転換などが難しく,通常の歯科治療の受診や自己の口腔衛生管理が困難な場合

 c)医学的リスクの問題:歯科医療上の侵襲もしくは刺激が加わることにより,生理的機能に異常を起こし,症状の悪化や偶発症が予想できる場合

 d)環境因子の問題:生活環境が医療,ことに歯科医療に不利な状況にあり,患児と医療との接点や,口腔衛生の維持不能による口腔疾患の悪化に結びつく場合

●治療方針

A.患児,保護者のニーズの把握

 医療面接や患児の観察から患児の障害の種類や協力度に対する情報を得て,歯科治療に関する問題点を抽出し,患児や保護者のニーズを把握する.また患児の対応・管理を行っている医療機関への対診も必要に応じて行う.

B.歯科治療への問題の対応

1.歯科治療への協力性の問題

 定型発達児では,通常3歳過ぎから歯科治療の適応期となるが,知的能力障害児や発達障害児においては,その年齢が過ぎても通常下での歯科治療の受け入れに時間がかかったり,協力が困難だったりする場合が多い.この場合,歯科治療をどこまで受け入れられるかを,患児の発達年齢を推定することにより推測できる.

 発達年齢が,2歳6か月あれば口腔内診察は可能となる.しかし3歳未満では通常の歯科治療は困難と考えられている.発達年齢が3歳6か月~4歳までは境界域とされ,4歳以上が確認できれば通常の歯科治療の受け入れも可能となりやすい.そこで幼児に適応する遠城寺式乳幼児分析的発達検査法などに

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