A.生前より始まる悲嘆に寄り添う
小児の緩和は病児が治癒しえない疾病を有した時点から始まる.「life-threatening condition」と表現されるその状態は段階的に進行する.疾病は臓器の機能障害を通して多面的な生活困難と苦痛症状を生じさせる.また児と家族を特別な悲嘆に直面させ,心理社会的な孤立の引き金となりうる.死とその過程とは「生きた実体験(lived experience)」であり,児と家族は適切な緩和的な資源の支援のもと「いかに生きるか」を見つめ,暮らしの特別な願いを実現するプロセスを通して,予期悲嘆(anticipatory grief)の危機を乗り越えるきっかけを生む.したがって,子どものEOL(end of life care)は家族(時に周囲の人のつながりを含む)という心理コンテクストのときに綻びかけた「生きるという希望のものがたりの紡ぎなおし」の側面を有する.