診療支援
治療

在宅でのグリーフ・ビリーブメントケア
岩本彰太郎
(三重大学医学部附属病院小児トータルケアセンター・センター長)

 新生児・小児医療の進歩に伴い,病気で亡くなる子どもが減少する一方で,小児在宅医療の普及により在宅で子どもを看取る事例が増えてきている.本項では,子どもと死別した家族の深い悲嘆についての基本的な考え方と具体的アプローチを概説する.

A.基本的な考え方

 死別(ビリーブメント)とは,死によって大切な人を喪失した状態を意味し,悲嘆(グリーフ)とは,大切な人の喪失に関連したさまざまな心理的・身体的症状を含む情緒的反応を意味する.

 死別後の遺族の悲嘆は,いわば正常なストレス反応としてとらえることができ,通常①感情的反応,②認知的反応,③行動的反応,④生理的・身体的反応の4つに分類される.これらの悲嘆のプロセスには終わりはなく,大切な人の死を受け入れ,故人のいない生活に適応できるよう支援していくことが重要である.そのため決して遺族に悲嘆からの早急な回復を求めてはいけない.

 しかし子どもと死別した親や家族の悲嘆は,より深く,適応が困難なものであり,長期化することがある.特に子どもを病気で亡くした親の多くは,罪責感を抱き,時に子どもにかかわった医療者に「怒り」を向けるなど特徴的な感情的反応を示す.一方,残されたきょうだいは「自分が死んだほうがよかった.なぜ自分が生き残ったのか」など罪悪感や自責の念に苛まれ,また「死」を強く意識することで不安・恐怖などの感情的反応が誘導され,自己非難といった認知的反応や睡眠・摂食障害などの生理的・身体的反応へと広がっていく.また,自らが亡くなったきょうだいに成り代わり振る舞おうとするなど,行動的反応を示すこともある.

 このように,子どもと死別した親と家族の悲嘆は多様で,時に通常ではない悲嘆,すなわち「複雑性悲嘆」として表出されることにも留意しておく必要がある.特に子どもが亡くなる前から親が精神疾患を患っている場合や,親子関係に問題があった場合などには,複雑性悲

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