診療支援
治療

子ども虐待予防における小児科医の役割
井上登生
(医療法人井上小児科医院・理事長(大分))

 子ども虐待予防の臨床に多職種連携は欠かせない.本書第16版が2015年9月に発刊された後,わが国の子ども虐待予防対策において重要な変革があった.

 1つは2016年に児童福祉法などの改正が国会で全会一致で可決された.この改正ではそれまでと異なり,第1条に「子どもの最善の利益の優先原則」,第2条に「家庭養育優先の理念の規定」,第3条の2に「国および地方公共団体の支援のあり方の規定」が明記され,法の理念から変更した1947年の制定以来の抜本改正となった.

 もう1つは,2018年12月8日に小児医療にかかわる医療者の悲願であった成育医療等基本法がこちらも全会一致で可決された.

 このような変革のなか,2018年3月の東京都目黒区の5歳女児事件,2019年1月の千葉県野田市の10歳女児事件,2019年6月の北海道札幌市の2歳女児事件と相次いで悲惨な虐待死事件が発生した.いずれのかかわりを見ても,子どものアドボケイト(代弁者)として小児科医の役割が問われる事件でもあった.

 本章「子ども虐待と小児科医の役割」の執筆者は,いずれもわが国を代表する子ども虐待予防に関するエキスパートであり,各項に重要な視点がちりばめられている.予防接種,乳幼児健診,園医・校医として子どもと養育者に直接接する機会が多いのは小児科医である.本章の各項で述べられる注意点に配慮し,小児科医としての「何か変だな?」という感性を駆使して,少しでも子どもの異変に気づいたら,まず市区町村の要保護児童対策地域協議会,児童相談所や保健所に連絡を取り,気になる点のオープン化と多種職による協働を試みてほしい.



参考文献

1)ラジオNIKKEI:小児科診療Up-to-DATE:包括的虐待予防システム作りと小児科医の役割(2019.1.9放送)

  http://www.radionikkei.jp/uptodate/ondemand/upt

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