A.救急外来で子ども虐待が疑われる場合の初期対応
医師が救急外来で原因不明の外傷,消耗状態の小児を診察する場合,通常の事故やけが,内因性疾患と同様に虐待の可能性を念頭におく必要がある.実際の外傷と,本人・家族が訴える受傷機転(外傷が生じる機序)との間に乖離がある場合にも,虐待の可能性を考える必要がある.
身体的虐待を疑う契機となる皮膚挫傷(体のあざ)は衣服などで隠れた場所に生じることも多く,子どもの診察は普段から全身診察を心がける.救急外来受診時の主訴が虐待を示唆するものとはまったく異なる場合でも,診察の過程で虐待を否定しえない「気になる症状」を認めた場合には,放置せずに以下の対応を行う.
虐待を疑う場面では子どもの安全確保を最優先する.虐待の有無にかかわらず,まずは医学的に重症度が高いかどうかを判断し,必要な治療を行う.その場で虐待と決めつけることはしない.また,この段階で医師から保護者