診療支援
治療

虐待防止ネットワーク
child abuse protection network
山崎嘉久
(あいち小児保健医療総合センター・副センター長)

 児童虐待への対応には,地域の関係機関とのネットワークが欠かせない.医療機関には,外来や救急診療などにおける発見と通告,児童精神科診療における心のケア,産科や周産期診療における予防的な対応が求められる.それぞれの場面でもネットワークが活用される.

A.発見と通告のためのネットワーク

1.病院内ネットワーク

 児童虐待の発見と児童相談所などへの通告には,病院内のネットワークが有効である.地域の中核的な病院では医療ソーシャルワーカーなどを事務局とした院内組織(委員会など)が設置されていることが多い.主治医や担当看護師だけでなく組織として情報を共有することが,その後の対応を円滑にする.

2.診療所と中核的な病院とのネットワーク

 診療所の医師にも通告義務があるが,地域ネットワークのなかでは,かかりつけ医として温かく家族を受け入れる役割も重要である.既存の医療連携システムを利用して,中核的な病院に患者として紹介し,病院から通告するネットワークを構築することができる.外傷や体重増加不良などから虐待を疑う場合,病院での治療や精密検査を理由に家族の同意を得て紹介し,別途,病院のソーシャルワーカーなどに虐待を疑っている状況を知らせる.

B.地域ネットワークにおける医療機関の役割

1.通告後の医療機関の役割

 児童相談所などへの通告は,対応の始まりであってゴールではない.通告後にも医療機関としての役割がある.治療中に,一時保護のため他院に転院する場合や施設入所となる場合には,転院先の医療機関との十分な情報共有が必要である.地域での見守り機関の1つとして継続受診している場合,医療機関は子どもの状況変化や,離婚や再婚などの家族形態の変化,転居にいち早く気づくことができる.すみやかに児童相談所や市町村に情報提供する必要がある.

2.児童精神科と地域ネットワークとの連携

 子どもの心の診療には関係機関からの情報は欠かせ

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