A.予防概念
子ども虐待の予防概念は,一般を対象とした啓発・教育の1次予防,虐待リスクの高い人を対象に養育困難を軽減する個別支援や子育て支援などの2次予防,そしてすでに虐待事象が生じ,今後の再発を防ぐため方略を行う3次予防がある.3段階の予防概念であるが,目の前にいる養育者への個別対応は組み合わせての実践が望ましい.
B.援助の基本的な考え方
厚生労働省は「児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv21/01.html)を発表している.基本的な考え方は「保護者に対する援助は,子どもの最善の利益を保証するために実施する」である.子どもと保護者は必要に応じて一時的に分離されることがあっても,保護者が虐待の事実と真摯に向き合い,再び子どもと生活できる(家庭復帰,親子再統合)のであれば子どもの福祉にとって最も望ましいことである.
親子分離をした子どもを含め,被虐待児の親子関係の修復は多様で複雑な課題を抱えている.保護者は虐待を否認したり児童相談所を含め関係機関と対立したりすることも多い.また虐待された子どもは保護者との愛着形成に課題があり,社会適応の難しさがあることを援助者は理解する必要がある.
C.治療―援助の枠組みと内容
①保護者プログラムの紹介・実施,②関係機関連携による家庭復帰支援,③保護者の養育スキルの向上支援があげられる.②は,市町村が窓口となり主体的活動を担う「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」の活用である.「協議会に必要な情報を提供することは医師の守秘義務違反にならない」ことを医師は知る必要がある.
関係機関からの情報収集や多職種の協働により,子どもと家族の状況を多角的にアセスメント(評価)したうえで援助方針を立てる必要がある.①と③については,養育スキルなどを学