medicina 62巻 1号 (2025年1月発行)

特集 糖尿病治療薬のチョイス!—こんなとき,あんなとき

電子版ISSN:1882-1189
印刷版ISSN:0025-7699
印刷版発行年月:2025年1月
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特集 糖尿病治療薬のチョイス!—こんなとき,あんなとき

特集にあたって

62巻1号 , 2025年1月 , pp.10-11
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 糖尿病診療(ダイアベティス・ケア)がここまで進化し,深化することを誰が予想しえたであろうか.インスリンが発見される前の時代は,糖尿病性ケトアシドーシスとの戦いであった.その後は強化インスリン療法で血糖値やHbA1c値を低下させることの重要性が認識され,細小血管合併症の発症進展を抑制することに重きが置かれた.次に,心血管イベントを中心とした動脈硬化性疾患の発症進展抑制が重要視され,われわれ世代が医師になった頃は“良い血糖コントロールの裏返し”という感覚で捉えられていた低血糖が重大な有害事象であると意識改革させられた.それらの歴史を踏まえた近年のダイアベティス・ケアは,血管合併症・併存疾患の発症進展抑制や健康寿命の延長のみならず,ダイアベティスとともに生きる人が幸せな人生を満喫できる生活の質の確保をも考えた血糖管理が求められている.しかるに,われわれは単なる血糖コントローラーから脱却し,患者の人生設計をともに考えるライフプランナーへと進化するときがきたと言える.

 また,多種多様な糖尿病治療薬が臨床応用され,血糖降下作用を超えた臓器保護作用のエビデンスが数多く報告されている昨今,薬剤のチョイスの医学的根拠も一筋縄ではいかない.血糖降下作用,体重減少作用,副次的なAdditional benefits,有害事象のリスクも含めた安全性・コスト面への配慮など,どの因子を優先して治療ストラテジーを構築するかは患者の病態のみならず,心理面や社会的背景によっても変わってくる正解のない禅問答のようにも感じられる.

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●今月の特集執筆陣による出題です.糖尿病治療薬に関する理解度をチェックしてみましょう!

座談会
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われわれ3人は1995年に医学部を卒業した.それから30年,刻一刻と変遷する糖尿病学と糖尿病診療を皮膚感覚で捉えてきた.血糖降下がすべてであった糖尿病治療は一変し,糖尿病のある人の幸せな人生を目指す“ダイアベティス・ケア”へと進化した.しかし,一方で武道の“形”のような診療の根幹が失われつつあるかもしれない.本座談会では95年トリオで30年の流れを振り返りつつ,ダイアベティス・ケアの現在と未来予想図を議論してみた.(野見山)

総論
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Point

◎最初にインスリンの適応について判断する.

◎以下のStep 1〜4を総合的に考慮して薬剤を選択する.

 Step 1:インスリン分泌不全やインスリン抵抗性を評価し,病態に応じた薬剤を選択する.

 Step 2:低血糖リスク,腎機能障害,心不全などを評価し,安全性を配慮する.

 Step 3:慢性腎臓病,心血管疾患を併存する症例では,ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬やグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬,心不全を併存する症例ではSGLT2阻害薬を考慮する.

 Step 4:服薬継続率,コストなどの患者背景を考慮する.

血糖管理改善のための糖尿病治療薬のチョイス

メトホルミンの次のチョイス

62巻1号 , 2025年1月 , pp.36-39
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Point

◎早期よりメトホルミンと作用機序の異なる血糖降下薬を併用することで糖尿病の予後が改善する.

◎日本人における検討で,ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬(SGLT-2i)とジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬(DPP-4i)のHbA1c<7%達成率は同等であった.

◎ボディマス指数(BMI)<25 kg/m2ではDPP-4i,BMI≧30 kg/m2ではSGLT-2iの併用が体重への影響・血糖変動の改善に有用である可能性が示された.

DPP-4阻害薬の次のチョイス

62巻1号 , 2025年1月 , pp.40-43
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Point

◎ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は本邦において最も多く初回処方されている2型糖尿病治療薬である.

◎DPP-4阻害薬はグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬を除けば併用可能であるが,メトホルミン,イメグリミン,ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬との併用療法を推奨する.

◎DPP-4阻害薬単剤または上記併用療法にて血糖マネジメントを達成できない場合や腎機能障害・心疾患などの併存疾患がある場合は,DPP-4阻害薬をGLP-1受容体作動薬に切り替える.

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Point

◎ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬には,多彩な臓器保護作用がある.

◎SGLT2阻害薬により,代謝的変化(体重減少・脂肪肝改善)がもたらされる.

◎ファーストチョイスは,肥満+心疾患のある症例,腎保護作用を期待する症例である.

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Point

◎ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬によるカロリー損失に対する適応反応として,代償性過食と呼ばれる食欲亢進が認められる.

◎代償性過食では,炭水化物,特にショ糖の摂取量が増加する.

◎代償性過食の予防には,グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬が有効な選択肢であり,メトホルミンも補助的な役割が期待できる.

配合剤,週1回製剤のチョイス
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Point

◎ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬とメトホルミンの併用は,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両者を改善することで2型糖尿病の病態の進行を抑制する.

◎配合剤の活用により,服薬アドヒアランスの向上,クリニカルイナーシャの回避,早期からの治療強化の促進などが期待できる.

◎シックデイのリスクの高い患者や腎機能低下を認める患者では,配合剤への変更は慎重に行う.

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Point

◎わが国の2型糖尿病治療において,ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬とナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬は使用頻度が高く,さらに両薬の併用は多いと推測される.

◎両薬の併用療法に比べ,両薬の配合剤はアドヒアランスの改善,薬価の削減,クリニカル・イナーシャ対策,治療満足度の向上につながると思われる.

◎両薬を併用するメリットとして,①SGLT2阻害薬によるグルカゴン上昇をDPP-4阻害薬が抑制する,②SGLT2阻害薬の有害事象をDPP-4阻害薬が減少させる,③SGLT2阻害薬がDPP-4阻害薬のインクレチン効果を増強させる可能性がある,などの点が期待できる.

◎両薬の配合剤の需要は,2型糖尿病治療において今後ますます増えていくことが予想される.

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Point

◎ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は,禁忌が少なく単独使用で低血糖をきたしにくいという特長があり,現在わが国で最も使用されている経口糖尿病治療薬である.

◎週1回製剤であるトレラグリプチン,オマリグリプチンが使用可能であり,共に1日1〜2回製剤と同等の血糖改善効果が得られる.

◎各種アンケート調査の結果によると,服薬アドヒアランスの向上だけでなく治療満足度やQOLを一部改善することが期待できる.

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Point

◎グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬は,GLP-1受容体作動薬よりも血糖降下作用,体重減少作用が大きい.

◎GLP-1受容体作動薬は「作用時間」「体重減少作用」「剤形やデバイス」の視点で使い分けるとよい.

◎GLP-1受容体作動薬には心血管イベントや腎症の進展を抑制するというエビデンスが多数報告されている.

◎生活習慣の改善で効果不十分な肥満2型糖尿病患者では,早期からのGIP/GLP-1受容体作動薬の使用を検討する.

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Point

◎それぞれのインスリン製剤の特徴を押さえ,適切な薬剤を使用することが重要である.

◎インスリン療法は糖尿病治療の“最終手段”ではない.

◎外来でインスリン療法を導入する際は,ベーサルインスリンから開始することが安全かつ患者からの理解が得られやすい可能性がある.

◎インスリン導入時には長期的な視点での出口戦略を想像することが重要である.

一歩進んだ薬剤のチョイス
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Point

◎肥満を伴った糖尿病において,体重を減らす治療は心血管アウトカムや脂肪率を改善する可能性がある.

◎糖尿病の薬物療法において,「超高度:セマグルチド,チルゼパチド」→「高度:デュラグルチド,リラグルチド」→「中等度:前述以外のグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬,ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬」→「影響なし:ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬,メトホルミン」の順に強い体重減少作用を有する.

◎体重減少効果のある糖尿病の薬剤比較によれば,現在使用可能な薬剤のなかではグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが最も強い体重減少作用を示す.

◎早期から強力に体重と血糖を管理することにより,糖尿病治療の目標である“糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL”を達成できる可能性が広がった.

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Point

◎尿アルブミンの有無にかかわらず,慢性腎臓病(CKD)を合併した糖尿病を有する症例ではナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬を積極的に考慮するべきである.

◎腎機能低下例や尿アルブミン陽性症例では,腎保護の可能性のある薬剤を検討する必要がある.

◎それぞれの薬において注意すべき点があり,患者個人に合わせて薬剤選択を行う.

◎腎機能低下を有する症例では低血糖リスクや副作用の増強の懸念から,減量や中止が必要な薬剤がある.

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Point

◎動脈硬化性疾患の発症や進展を抑制するためには,早期より良好な血糖マネジメントや動脈硬化のそれぞれのリスク因子に対する包括的な介入が重要である.

◎グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬とナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬による複合心血管イベントの抑制効果が示されている.

◎動脈硬化性疾患の既往がある,またはその発症リスクが高い場合にはGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の使用を検討する.

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Point

◎先入観を排し,せん妄とうつの鑑別を行う.頭部CTなどで画像検査上の異常がないかを確認する.

◎家族の協力や介護保険など得られるリソースを確認する.

◎介護者による薬剤管理の容易さ,剤形(配合剤,週1回製剤),一包化などを考慮する.

◎シックデイの具体的な対応について,薬を管理する介護者に繰り返し説明する.

◎不必要な変化を避け,患者の意向を尊重し,敬意と共感をもって対応する.

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Point

◎糖尿病患者はサルコペニアになるリスクが非糖尿病者に比べて高い.

◎糖尿病によるインスリン抵抗性や高血糖がサルコペニア進行の要因となる.

◎糖尿病治療薬がサルコペニアに与える影響は薬剤により異なり,慎重な薬物選択が求められる.

◎高齢糖尿病患者において,フレイルの予防とサルコペニア管理が重要な課題である.

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Point

◎わが国では糖尿病をもつ人の死因第1位はがんである.

◎がんへの直接的な効果を期待してメトホルミンやSGLT2阻害薬をチョイスするのは時期尚早である.

◎がん周術期においてはメトホルミンやSGLT2阻害薬の術前休薬が重要となる.

◎化学療法中はステロイドによる高血糖やシックデイを考慮して治療薬をチョイスする.

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Point

◎便秘の診断および治療において,まず消化管の狭窄病変を確認する必要がある.

◎糖尿病では腸管運動の低下や直腸の感覚閾値が上昇することがあり,便秘の合併が多い.

◎加えて神経障害,高血糖,食事摂取量減少,糖尿病治療薬によって便秘になりやすい可能性がある.

◎費用対効果の面から浸透圧性下剤が第一選択である.酸化マグネシウム内服例のなかでも長期使用例,ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬投与例,腎機能低下例,高齢者は高マグネシウム血症になるリスクがある.

◎刺激性下剤は有効であるが,耐性などから短期間で頓用での使用を心掛ける.

◎浸透圧性下剤,粘膜上皮機能変容薬,胆汁酸トランスポーター阻害薬は用量調整をすることを前提にして,適正に使用する.

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Point

◎本邦において2型糖尿病は増加しており,脂肪性肝疾患の合併も多い.

◎2型糖尿病と脂肪性肝疾患の病態は相互に影響し合うため,包括的マネジメントが望ましい.

◎脂肪性肝疾患を合併する糖尿病治療では,エビデンスのある治療薬の選択が重要である.

◎脂質異常症や高血圧症の治療薬のなかにも,脂肪性肝疾患に好影響をもたらす薬剤がある.

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Point

◎血糖は自律的に増減するわけではなく,エネルギー収支にかかわる多くの生理作用の結果として決定されている.

◎糖尿病状態ではインスリンとグルカゴンの分泌制御異常が存在し,病態に深く関与する.

◎膵内分泌細胞機能異常の進行を抑制し,病態の改善とともに細胞機能の保護,回復,維持を見据えた治療が求められる.

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Point

◎シックデイ時には血糖管理が困難となり,重篤な急性代謝失調に至る可能性がある.

◎普段からシックデイルール,医療機関の受診が必要な場合について確認しておく.

◎インスリンを使用している場合は,自己判断でインスリンを中止させない.

◎インスリン以外の薬については,どのように継続・調整・中止するのかが大切である.

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Point

◎ステロイド薬は幅広い病態に用いられるため,他院,他科で処方されることもあり,薬剤使用歴の聴取が重要である.

◎ステロイド薬による血糖値の悪化はインスリン抵抗性を主体に,長期的にはインスリン分泌低下もその病態となりうる.

◎食後高血糖のみが目立つ症例も多く,早期発見のためには早朝空腹時血糖値のみのモニタリングでは不十分である.

◎ステロイド薬の種類,投与量,投与期間,併用薬や併存症などを考慮のうえ,個別化した対応を行う.

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Point

◎緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準が2023年に改訂され,definiteとprobableに分類された.

◎definiteはインスリン療法であるが,probableの治療の規定はない.

◎診断時にdefiniteかprobableかを見分けるのは困難である.

◎海外でのlatent autoimmune diabetes in adults(LADA)あるいはlatent autoimmune diabetes in young(LADY)がSPIDDMの治療を考えるうえで参考となる.

◎内因性インスリン分泌能が保たれている場合は2型糖尿病の治療を検討する.

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Point

◎メトホルミンが2型糖尿病治療薬の第一選択である.

◎経口薬なら後発医薬品(ジェネリック医薬品),注射薬ならバイオ後続品(バイオシミラー)を検討する.

◎種類ごと,同種薬剤間での薬価差も意識する.

◎配合剤の使用も有用である.

◎糖尿病外来通院における治療法ごとの医療費負担も把握する.

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Point

◎J-DOIT2試験によると,糖尿病患者の年8%程度が通院を中断している.

◎治療中断歴がある糖尿病患者では,血管合併症の頻度が上昇する.

◎配合剤の使用は服薬アドヒアランスを向上させる可能性がある.

◎週1回製剤〔ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬〕は服薬継続率が高いと考えられる.

◎スティグマに配慮することも治療継続には重要である.

連載 日常診療で役立つ 皮膚科治療薬の選びかた・使いかた・13
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Q問題

図11)の皮膚真菌症に使用する抗真菌薬は?

a 外用薬  b 爪用外用薬  c 経口薬

連載 明日から実践できる! 臨床医のための腎臓領域超音波(Nephro POCUS)・1【新連載】

NephroPOCUS概要

62巻1号 , 2025年1月 , pp.158-160
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NephroPOCUSとは?

 本連載において,NephroPOCUSとは「腎臓内科におけるポイントオブケア超音波検査(Nephrology oriented point of care ultrasound)」と定義づける1).この方法は,医師自身が患者の病歴・身体所見に基づいて超音波検査を行うことで,診断精度を高めたり,治療効果を即座に評価したりするための非常に有効なツールである2).POCUSは,これまでの視診・触診・打診・聴診に加えて「第5の身体検査法」として,医療現場で広く認知されるようになってきた3)

 実際,POCUSを使って病歴・身体所見やバイタルサインを総合的に評価することで,検査前確率を算出し,その後の詳細な検査(採血検査や尿検査,より詳細な超音波検査など)にスムーズにつなげることが可能である.

連載 目でみるトレーニング

問題1114・1115・1116

62巻1号 , 2025年1月 , pp.161-167
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連載 ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・43
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 足がしびれて,徐々にしびれが膝下まで上がってくる.高齢の患者さんではこのような症状を聞くことが多いです.「脊柱管狭窄症のせいかもしれない」と言う患者さんが多いですが,腰痛がなかったり,しびれの範囲も臀部から下肢にかけてではなかったりと,患者さんの考えている診断とは異なることが多いです.それでは,一緒に勉強していきましょう!

書評
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 本書は,家庭医としての藤沼康樹氏(医療福祉生協連 家庭医療学開発センター長)が,これまでの自身のジェネラリストとしての実践知を,多様な領域の大理論や概念モデルと照らし合わせ解説し,今後の発展の方向性を論述したものである.

 第Ⅰ章「プライマリ・ケア外来の一般要件」は,家庭医としての実践を始めたばかりの方へのパール集となっており,独り立ちする際に「ここは気をつけよう」と先輩としてアドバイスするような内容となっている.第Ⅱ章「卓越したジェネラリスト診療の実践」では,既存の大理論や概念モデルについて基礎知識の整理を行い,かつ“医師らしく”考えるその方法は「診断推論」だけではなく,患者を理解していくにはいろいろな見方があるということを,豊富な事例を基に解説している.特にこの章の4〜8節は,看護学領域でのパトリシア・ベナーの著書『From Novice to Expert』を彷彿とさせる内容で,エキスパートになっていく(卓越していく)ときのものの見方・考え方が具体的に論述されている.第Ⅲ章「卓越性を支える『チーム』と『教育』」では,多職種連携教育の3つのメリット「チームスキルの獲得」「共同学習の方法の獲得」「省察と経験学習の方法の獲得」のうち共同学習・省察・経験学習について考察している.専門職連携教育は,チームビルディングなどのチームスキルの獲得のみに焦点が当てられがちだが,実は,チームを俯瞰し,どんなチームであってもその職種の役割を果たし,かつ他の職種の役割発揮を支援する「共同学習」「省察」「経験学習」のスキルが必要である.家庭医として,というか,臨床家として,全ての職種が長く活動するために必須のコンピテンシーであると思う.

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 本書を手に取り,初めに感じたことは,「自分の研修医開始時点に読みたかった……」の一言に尽きる.なんなら,専攻医や看護師にもとても役に立つ内容ですよ,これは.

 第1章は,医学部の座学では全く教わることのない,現場の話から始まる.それぞれの病院・病棟には仕事をする上でのルール〔一部はローカルルール(汗)〕があるが,そのお作法は,都度現場の先輩方に口頭で教わってきた.時に別のローテーション先の先輩医師だったり,先輩看護師だったり,同僚だったりとコミュニケーションを取りながら,その不文律をなんとなく自分の中で習得していった.昔はそのような“俺流かもしれない不文律”が通用したが,昨今は医療安全の観点からも,ある程度型にはまったものが必要になってきている.本書はまさにその点を,具体例と共に記載されている.とりあえずこれを読んでおけば大きく外れることはなさそうである.さらには,プレゼンテーション,コンサルテーション,学会発表,論文,SNSの使い方と続く.まさに痒いところに手が届いている感じ.世の中には医学書といえば専門書が多く,より細分化された,マニアックな教科書が増えつつある中,本書のような,いわば“医業の入口部分”にこれだけ手厚く解説を加えている著書を私は見たことがない.

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 救急外来・一般内科外来は,ふらふらする,力が入らない,めまい,しびれ,などの愁訴に溢れており,神経疾患を考えない日はありません.当院ではそのなかから抗NMDA受容体脳炎,Guillain-Barré症候群などさまざまな疾患が明らかになる過程を目の当たりにできますが,そんな診療の先頭に立つ脳神経内科医が本書を上梓した杉田陽一郎先生です.

 しかしそもそも神経診療を苦手とする救急医・一般内科医は少なくないでしょう.苦手と思って避けていると上達しない→できるようにならない→避ける→上達しない,という悪いループから抜け出せなくなってしまいます.そもそも髄膜炎と脳卒中のみ意識していれば大丈夫,ややこしい脳神経内科の疾患が好きだったら救急医になってないよ,という声も聞こえてきそうです.とにかく苦手意識が強いんですよね.

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 本書は,医療の現場で働く医師が公私にわたって日常的に直面するさまざまな状況において必要なビジネススキルやマナーを詳しく解説しています.以下に,本書を読んで特に印象に残ったポイントを紹介します.

 まず,敬語の使い方は医療現場で非常に重要ですが,本書の「上下逆転敬語」(p. 30)の章は特に参考になりました.日常の業務で間違いやすいポイントを具体的に解説しており,私自身も気を付けなければと感じました.また,医療従事者としての院内での行動は常に見られているという点も印象的でした.これは,私が勤務するハワイの病院でもよく「on-stage, off-stage」として注意喚起されるポイントです.患者や同僚に対する態度はプロフェッショナリズムを保つために重要であると再認識しました.

目次

62巻1号 , 2025年1月 , pp.6-8

読者アンケート

62巻1号 , 2025年1月 , pp.175
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62巻1号 , 2025年1月 , pp.176-177

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62巻1号 , 2025年1月 , pp.178

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62巻1号 , 2025年1月 , pp.179

奥付

62巻1号 , 2025年1月 , pp.180