medicina 62巻 11号 (2025年10月発行)

増大号特集 深掘り! エッセンシャル漢方—1対1対応の一歩先へ

電子版ISSN:1882-1189
印刷版ISSN:0025-7699
印刷版発行年月:2025年10月
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増大号特集 深掘り! エッセンシャル漢方—1対1対応の一歩先へ

特集にあたって

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1740-1741
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 まず,筆者の経験上,漢方の学習へのニーズはきわめて多様であると感じる.例えば,筆者が自身よりも若手の医師に漢方のイメージを尋ねてみると,「大建中湯(だいけんちゅうとう)って消化管術後にルーチンで出す処方ですよね,漢方薬だったんですか」「学生時代の講義で,漢方とは何かと講師の先生に聞かれ,“中国から伝わった……”と答えたら,“違います! 漢方は日本独自の伝統医学です!”と激しく訂正されてから,漢方へのハードルが上がったまま,今に至ります」などといった反応がある一方で,「漢方って,総合診療とかなり親和性がありますよね」「もっと早く漢方を学んでみたかったです」など,漢方を学びたいという関心の高さを感じる反応もあり,漢方を学ぶモチベーションには幅広い背景やグラデーションがあると考えられる.

 また,最近は上記の大建中湯=イレウス予防をはじめとして,芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)=こむら返り,葛根湯(かっこんとう)=風邪の初期など,症状と1対1対応の処方への理解は進みつつあるが,それらの効果が乏しかった場合に,どのように考え,次にどのような漢方薬を出せばよいかについては,学習する機会は多くないのが現状ではないだろうか.今回,1対1対応の漢方薬の理解から一歩先のイメージを共有することを目標に,特集を企画した.“エッセンシャル”と名付けたのは,医療機関によっては院内の採用薬の数に上限があり,採用できる漢方薬の数にも限りがあると思うが,“この漢方薬だけは”ぜひ院内で処方できるように検討してもらいたいと思うものを厳選したことが所以である.

特集を読む前に あなたの理解度チェック!

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1743-1749
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●今月の特集執筆陣による出題です.漢方治療に関する理解度をチェックしてみましょう!

座談会
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今回,漢方診療の初学者がもつ,“芍薬甘草湯=こむら返り”,“大建中湯=イレウス予防”といった1対1対応のイメージの“一歩先”にフォーカスした特集を企画しました.本日の座談会では,漢方専門医である吉永先生と,ジェネラリストとしてさまざまな現場を経験されてきた綿貫先生をお招きし,ジェネラリストは漢方薬をどのように活用していけばよいのかについてディスカッションできればと思っています.(樫尾)

初学者からよく受ける質問

漢方薬の即効性は?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1760-1761
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Point

◎漢方薬は数分〜30分以内に即効性を発揮しうる.

◎救急医療・急性期疾患でも漢方薬は治療選択肢となりうる.

◎漢方薬の即効性の発揮には,証の把握に基づく的確な処方選択が重要である.

漢方薬が第一選択薬となる症候は?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1762-1765
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Point

◎数値や画像で捉えにくい症候で漢方薬の有用性が発揮される.

◎症候と証の理解を深め,段階的に漢方診療へ親しむことが大切である.

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Point

◎漢方薬の副作用は,軽度の症状から入院を要する程度の症状までさまざまである.

◎漢方薬には構成生薬が複数含まれており,構成生薬別に副作用を考えることが大切となる.

◎一部の副作用は自覚症状を伴わないこともあるため,漢方薬を内服継続するなら,定期的な血液検査が必要と考えられる.

妊娠中や授乳中でも飲める漢方薬は?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1770-1772
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Point

◎妊娠中・授乳中でも比較的安全に使用できる漢方薬が存在する.

◎当帰芍薬散は,妊娠中・授乳中の服用の安全性と有用性が示されている.

◎授乳期の痛みや産後疾患に対しても漢方薬が有効な選択肢となる.

漢方薬の最近のエビデンスは?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1773-1775
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Point

◎漢方治療のランダム化比較試験(RCT)は,2025年時点で累計700件近く存在する.

◎RCTや基礎研究により,臨床現場での漢方薬の活用の可能性が広がっている.

◎RCTの質的課題を踏まえ,さらに高品質なエビデンス構築が求められる.

漢方薬は顆粒のみ?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1776-1777
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Point

◎現代日本の漢方製剤には多様な剤型が存在する.

◎医療用漢方製剤と一般用漢方製剤で剤型や選択肢に違いがある.

◎剤型選択のみでなく,安全性・適応の確認が重要である.

漢方薬は併用していいの?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1778-1779
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Point

◎高齢者人口の増加に伴い,漢方薬と西洋薬の併用が増加している.

◎複数の漢方薬の合方で多様な症状に対応可能となる.

◎漢方薬の合方では,生薬の重複による副作用リスクへの注意が必要である.

漢方薬の飲み方は?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1780-1781
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Point

◎基本は医療用漢方エキス製剤を白湯に溶かして服用する.

◎服用のタイミングは食前・食間が望ましいが,継続が最優先である.

◎症状や体質に応じて温服や冷服などの工夫を指導する.

小児の漢方薬の飲み方は?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1782-1784
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Point

◎小児の漢方薬服薬指導には三者協働(医療者,保護者,子ども)と成功体験の積み重ねが重要である.

◎味や剤型,食品との組み合わせによる服薬の工夫が実践的に有効である.

◎五苓散,小建中湯は工夫次第で幅広い小児に安全に応用可能である.

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Point

◎漢方専門医資格が医師の専門性や信頼性向上に寄与する.

◎漢方専門医取得に向けた体系的な学修ステップを提示する.

◎学修の段階ごとに推奨される教材や学修リソースを紹介する.

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Point

◎漢方関連の主要学会には,日本東洋医学会と和漢医薬学会,日本生薬学会がある.

◎主な学会認定資格には漢方専門医,漢方認定医,漢方薬・生薬認定薬剤師などがある.

◎民間資格として,漢方生薬ソムリエや漢方アドバイザーなどが存在する.

AI導入で漢方診断はもっと身近になる?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1790-1793
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Point

◎わが国で広く用いられる漢方製剤の多くは非専門医により処方されているため,診療支援が必要である.

◎随伴症状がほどよく多い患者と比べて,少ない患者では人工知能(AI)は処方を選びにくい.

◎処方情報について教えてくれるチャットボット型AIも使用できる.

◎AIに正しい情報を入力するためには,患者の言葉を医療の言葉に正しく翻訳する必要がある.

患者からよく受ける質問
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Point

◎市販で購入できるOTC医薬品の漢方製剤は医療用漢方製剤より種類が多い.

◎以前は医療用漢方製剤のほうが構成生薬の分量やエキス含有量は多かったが,近年は満量処方のOTC医薬品も発売されている.

◎市販で購入できる漢方薬も,病院で処方される漢方薬と同様に副作用に注意が必要である.

◎OTC医薬品の漢方製剤には漢方薬と認識しにくい名称の商品もある.

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Point

◎漢方薬局という法律上の定義は存在しない.

◎漢方薬局では,生薬や一般用漢方製剤,健康食品などを取り扱う.

◎病院・クリニックの漢方薬は,薬価収載されている医療用漢方製剤と生薬である.

◎費用面では,漢方薬局では全額自己負担(自費)だが,病院・クリニックでは保険適用のため自己負担割合に応じた支払いのみで済む.

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Point

◎漢方薬が処方可能かは,医療機関の採用薬であるか否かによる.

◎漢方薬を処方するか否かは医師の判断による.

◎漢方薬を処方する医師は多いが,漢方医学的な見地に立ち,複数の漢方薬を適切に使い分けることができる医師はまだ少ない.

◎漢方薬は治療手段の1つであり,患者が漢方薬の処方を希望することは,必ずしも望ましいとは言えない場合もある.

漢方薬で痩せられる?

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1805-1807
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Point

◎防風通聖散は適切な食事療法,運動療法との併用で体重減少効果を促進する可能性がある.

◎メタ解析では,ボディマス指数(BMI)の減少効果を認めたが,ウエスト周囲径の減少効果は明らかではなかった.

◎防風通聖散は漢方薬のなかでは副作用のリスクの高い処方である.

◎肥満の解消には食事療法,運動療法が必須であり,漢方薬を飲むだけでは痩せることは期待しにくい.

エッセンシャル処方

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1808-1810
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Point

◎芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は,腓腹筋だけでなく,身体のさまざまな筋肉の痙攣に用いることができる.

◎芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は,尿路結石による疝痛や月経痛にも使用できる.

◎甘草の副作用リスクのため,芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)の頻回内服は避け,甘草を含まない処方(八味地黄丸や四物湯など)を検討する.

大建中湯(だいけんちゅうとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1812-1815
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Point

◎大建中湯(だいけんちゅうとう)は,術後イレウスの予防・治療に広く用いられている.

◎大建中湯(だいけんちゅうとう)は,腸管運動亢進作用,腸管血流増加作用などの作用機序が明らかになってきている.

◎大建中湯(だいけんちゅうとう)は,慢性便秘,過敏性腸症候群(IBS)などにも活用される.

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Point

◎腎虚とは加齢に伴う「先天の精気」の低下を示す病態であり,八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)はその改善を目的とする基本方剤である.

◎高齢者の腰痛,しびれ,頻尿,冷えなどがある場合,腹診で小腹不仁を認める場合は,腎虚を補う八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が適応となる.

◎構成生薬の地黄により胃部不快感が出ることがあり,胃腸虚弱者では八味地黄丸(はちみじおうがん),牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)の食後内服や,真武湯への変更を検討する.

六君子湯(りっくんしとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1819-1821
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Point

◎六君子湯(りっくんしとう)は機能性ディスペプシア(FD)の治療薬である.

◎六君子湯(りっくんしとう)は食欲不振や胃もたれに用いられる.胃腸が弱く,食が細い人に適する.

◎六君子湯(りっくんしとう)は胃食道逆流症(GERD)の治療薬としても用いられる.

麻子仁丸(ましにんがん)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1822-1823
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Point

◎麻子仁丸(ましにんがん)は,高齢者や体力が虚弱な人の便秘,コロコロ便に有用である.

◎麻子仁丸(ましにんがん)は,甘草や黄芩など副作用に注意が必要な生薬を含まないメリットがある.

◎麻子仁丸(ましにんがん)は,漫然と連用せず頓用や短期間の使用が望ましい.長期連用により大腸メラノーシスなどの有害事象が生じる可能性があるため,注意が必要である.

抑肝散(よくかんさん)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1824-1825
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Point

◎夜泣きする子どもに処方される甘く飲みやすい漢方薬である.

◎興奮を抑え,不眠に効く.

◎認知症に伴う興奮,妄想,幻覚への効果に関しては臨床研究が報告されている.

葛根湯(かっこんとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1826-1827
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Point

◎風邪の初期だけでなく,首背中のこわばりを伴う諸症状に用いることができる.

◎風邪に伴う下痢に葛根湯(かっこんとう)が使用できる.

◎エフェドリンの効果で動悸,不眠,食欲不振などを招くことがあるので,体力がない患者への処方には注意する.

麻黄湯(まおうとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1828-1830
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◎麻黄湯(まおうとう)はエキス製剤のなかでも強い発汗・解熱作用を持つため,インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの急性熱性疾患初期の発熱や,発汗がなく悪寒,頭痛,関節痛などの症状に効果を発揮する.

◎熱以外には鼻炎,咳・喘息,夜尿症,関節リウマチなどに有効である.

麦門冬湯(ばくもんどうとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1831-1833
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Point

◎乾性咳嗽に対して多く用いられる漢方薬だが,“潤いを与える”作用が強く,口腔乾燥症なども良い適応になる.

◎嘔吐や食思不振などの消化器症状に対して,症例によっては麦門冬湯(ばくもんどうとう)を用いることで症状改善を得られることがある.

◎より消化器症状が強く体力がある症例や,より虚弱体質であり内服による副作用が強く出てしまう症例では,代替案となる派生処方もある.

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Point

◎小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は風邪の初期症状やアレルギー性鼻炎でみられる,水様性の鼻汁や咳,喘鳴などの水分過多を伴う呼吸器症状に適応される漢方薬である.

◎気道・鼻腔粘膜の炎症や過敏な反応を抑える多彩な薬理作用が知られている.

◎高齢者や妊婦,基礎疾患をもつ患者に対しては慎重な使用が求められる.

五苓散(ごれいさん)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1838-1841
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Point

◎五苓散(ごれいさん)は頭痛,めまいの特効薬であり,第一選択薬として使える.

◎体内の水分の異常(水滞)を調整する作用があるため,急性胃腸炎,下痢,嘔吐,二日酔いに使用できる(即効性あり).

◎慢性硬膜下血腫,Ménière病,慢性腎不全,月経前緊張症候群まで応用範囲が広い.

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1842-1845
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Point

◎補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は,倦怠感に対して用いる代表的な漢方薬である.疲れやすく,元気がなく,胃腸の機能が低下している患者に用いる.

◎補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は,虚弱体質者の倦怠感や,過労・不摂生・手術・病気などをきっかけに生じた倦怠感にも使用される.

◎補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は,風邪が遷延し倦怠感や食欲不振があるとき,虚弱で風邪をひきやすいとき,慢性疾患や消耗性疾患による体力低下,アトピー性皮膚炎,男性不妊,子宮下垂,痔核などにも用いられる.

加味逍遙散(かみしょうようさん)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1846-1849
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Point

◎「逍遙」とは気の向くままに歩き回ることを意味し,加味逍遙散(かみしょうようさん)は不定愁訴を次々と訴えるような患者に使用されることが多い.

◎加味逍遙散(かみしょうようさん)は,気滞・気虚・血虚を背景にした月経不順や更年期障害に用いられることが多く,イライラや不眠,のぼせなど多彩な症状に対応できる.

◎加味逍遙散(かみしょうようさん)を長期投与する際には,山梔子による腸間膜静脈硬化症のリスクに留意し,5年以上の使用では代替方剤も検討する.

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1850-1851
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Point

◎安胎薬であり,妊娠中の下腹部痛,浮腫,頭痛などの諸症状に効果がある.

◎月経関連の症状〔月経前症候群(PMS),月経前不快気分障害(PMDD),月経困難症〕に幅広い効果がある.

◎女性のための薬剤と考えられがちだが,証が合っていれば男性の嗅覚障害や頭痛症状にも効果がある.

注目すべき生薬

甘草(かんぞう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1852-1856
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Point

◎甘草(かんぞう)は甘味料や化粧品としても使われる身近なものである.

◎甘草(かんぞう)は最も多くの種類の漢方薬に配合されている.

◎甘草(かんぞう)は筋緊張緩和や感染症症状の緩和などの目的で使用される.

◎甘草(かんぞう)には抗炎症作用,抗菌・抗ウイルス作用,抗酸化作用などが報告されている.

◎甘草(かんぞう)を含む漢方薬を使用する際は偽アルドステロン症による高血圧症,低カリウム血症に注意する.

麻黄(まおう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1858-1861
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◎麻黄(まおう)には発汗,鎮咳,去痰,利尿,鎮痛などの作用がある.

◎麻黄(まおう)は感冒,気管支炎,アレルギー性鼻炎,関節痛などに対する漢方薬に含まれている.

◎主にエフェドリンアルカロイドによる気管支拡張作用,血管収縮作用などが薬理作用とされている.

◎麻黄(まおう)を含む漢方薬を使用する際は交感神経刺激作用による高血圧症,不眠,胃腸障害などに注意する.

附子(ぶし)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1862-1866
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◎附子(ぶし)の原植物は毒草のトリカブトだが,加工により減毒化されている.

◎附子(ぶし)は痛みや冷えに用いられる.

◎神経障害性疼痛にも附子(ぶし)は効果がある.

◎附子(ぶし)を高用量で使用すると副作用が出ることがあるが,中止すれば軽快する.

黄芩(おうごん)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1868-1871
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◎黄芩(おうごん)を含有する漢方製剤は,多くのガイドラインに掲載されている.癌治療に関連した症状の予防や緩和など,幅広い領域で活用され,有効性が報告されている.

◎黄芩(おうごん)の作用として,神経保護作用,感染制御作用,腫瘍細胞増殖抑制作用などが報告されている.

◎副作用を起こす漢方製剤としては黄芩(おうごん)を含有するものが多いことが指摘されており,間質性肺炎や肝機能異常をきたす場合がある.使用する際には定期的な検査を考慮する.

地黄(じおう)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1872-1874
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Point

◎地黄(じおう)は渇きを潤し,栄養を補う働きがある.

◎地黄(じおう)は病後の体力回復,皮膚疾患,高齢者特有の症状に用いる漢方薬に配合される.

◎地黄(じおう)を含む漢方薬を使用する際は胃腸障害に注意する.

シーン別頻用漢方薬

救急外来で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1876-1881
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Point

◎治打撲一方は打撲傷に対して保険適用があり,その費用対効果は前向きランダム化比較試験でも実証されている.

◎五苓散はめまい症,胃腸炎,頭痛など多彩な症状に効果を示し,救急外来では汎用性の高い漢方薬である.

◎芍薬甘草湯は有痛性筋痙攣に効果が高く,熱中症の筋痛の特効薬である.

病棟(せん妄)で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1882-1887
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Point

◎過活動型せん妄では,怒りやイライラには抑肝散,顔を紅潮させ,われを忘れるほどの強い興奮には黄連解毒湯を選択する.

◎低活動型せん妄では,意欲低下には釣藤散,オドオド・ビクビクした不安や抑うつには加味帰脾湯を選択する.

◎せん妄予防では,“食う,寝る,出す,遊ぶ”を漢方治療で整えることで誘発因子の軽減を目標とする.

一般外来で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1888-1893
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Point

◎漢方では,1つの疾患・症状に対して1つの漢方薬で対応することはない.漢方医学的な見方(虚実・寒熱)を考慮して使い分ける.

◎急性疾患においては病期が大切で,急性上気道炎も初期に使う漢方薬と咳が出てから使う漢方薬は使い分ける.

◎高齢者は冷えている場合が多いので,漢方薬はエキス製剤を熱湯で溶かして少し冷ましてから飲むことが望ましい.

精神科で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1894-1898
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Point

◎精神症状を漢方医学的な視点で理解することは患者を多角的な視点でとらえることにつながる.

◎いくつかの精神症状に対し,漢方薬は向精神薬の“スキマ”を埋める役割を果たす.

◎向精神薬の服用を逡巡する患者に対して,漢方薬は代替薬となる可能性をもつ.

整形外科で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1899-1905
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Point

◎血腫を伴う外傷性の痛み,骨・骨周囲まで及ぶ深い打撲には治打撲一方が有効である.

◎炎症(熱感)を伴う痛みに関して,急性期の関節炎,筋肉痛には麻黄を含む越婢加朮湯,慢性期には麻黄と当帰を含む薏苡仁湯を考慮する.

◎阻血(冷え)を伴う下半身の機能障害には八味地黄丸,動脈硬化や狭窄の既往があり,血行不良を伴う痛みには疎経活血湯を考慮する.

在宅医療で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1906-1909
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Point

◎標準的な治療ではとりきれない患者・家族の困っている症状に対して,緊急性,嚥下機能,好みなどを総合的に判断して漢方薬を処方する.

◎在宅医療では高齢者が多く,嚥下機能低下など漢方薬の服用に対してハードルがあることが多いため,西洋薬よりも得意な(効く)分野で漢方薬を生かす.

◎甘草による偽アルドステロン症は特に高齢者に多く発症しやすいため,十分に注意する.

小児科で使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1910-1915
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Point

◎西洋医学的に問題がなく,「様子をみましょう」というときに漢方薬の出番があることが多い.

◎小児の頻用処方として,まずは小建中湯,甘麦大棗湯,抑肝散,五苓散,麻黄湯を使いこなせるとプライマリ・ケアで役に立つ.

◎小児の健やかな成長発達のためには,漢方薬だけでなく,睡眠,食事,運動という生活習慣の改善,養生も非常に大切である.

透析患者に使いたい漢方薬

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1916-1921
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Point

◎高齢者を中心に透析患者の合併症として問題となっているフレイル・サルコペニアは,漢方医学的に“腎虚”,“気虚”,“血虚”と捉え,補腎剤(牛車腎気丸や八味地黄丸)や補気血剤(十全大補湯や人参養栄湯)などを用いる.

◎透析中の低血圧に対しては五苓散を,筋痙攣に対しては芍薬甘草湯を用い,芍薬甘草湯が無効なら疎経活血湯を用いる.

◎出血傾向の患者に合併しやすい皮下血腫に対する治打撲一方,透析中の危険行為(認知症)に対する抑肝散など,西洋医学で対応困難な透析患者の各種症候に対しても漢方治療は有効である.

Column

注目される鍼灸

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1922
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 漢方薬と並び,世界で広く知られている東洋医学の治療法の1つに鍼灸がある.海外では鍼灸は高く評価されており,欧米では補完代替医療の1つとして鍼灸の有用性が認識され,医療機関での導入が進んでいる.英国の国立医療技術評価機構(NICE)が定める慢性疼痛ガイドラインにおいて,management optionsとして,運動・薬物・心理療法とともに鍼治療(acupuncture)の記載がある1).また,米国では,家庭医療研修中に鍼灸を学ぶことでオピオイドの処方が少なくなったという報告もある2)

 このような流れを受けてか,日本の医学教育モデル・コア・カリキュラムに“鍼灸”という文言を含めることが検討され始めているらしい.これは将来的に,医師が鍼灸の知識をもち,より包括的な医療を提供できるようになることを意味する.実際,すでに国内の医療機関,例えば大学病院などでは鍼灸治療を受けることができる.施術を行うのは鍼灸師ばかりではなく,東洋医学科などに所属する医師も含まれる.こうした環境は,患者が西洋医学と東洋医学を併用しながら治療を受けられる点で,非常に意義深いといえる.また,私の知る限りでも,開業医と鍼灸(師)とのかかわり方は,さまざまな形で増えてきている.例えば,医師自らが鍼灸治療を行うこともあれば,鍼灸院を経営したり,外部の鍼灸院と連携したりする事例もみられる.さらに,福島県立医科大学では,鍼灸師でもある鈴木雅雄教授の下で,大学院生が鍼灸に関連した研究を始めている.

付録

「エッセンシャル処方」に含まれる生薬一覧

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1924-1925
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INDEX(漢方薬→疾患・症状)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1926-1930
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INDEX(疾患・症状→漢方薬)

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1932-1936
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連載 日常診療で役立つ 皮膚科治療薬の選びかた・使いかた・22
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Q問題

図11)の細菌感染症に使用する外用抗菌薬はどれがよい?

a ゲンタマイシン(ゲンタシン® 軟膏)  b クリンダマイシン(ダラシン® Tゲル)  c オゼノキサシン(ゼビアックス® 油性クリーム)

連載 ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・51
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 頭痛を呈する疾患は多岐にわたります.前回は感染症に伴う髄膜炎の症例を提示しました.突発性の頭痛というと,クモ膜下出血を含めた出血性の脳卒中が思い浮かぶかもしれませんが,ほかの病変が原因となるケースもあります.それでは,一緒に勉強していきましょう!

連載 ウェブサイドマナー入門 オンラインで診る準備,できていますか?・6

オンライン診療における情報収集の技術

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1942-1946
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 オンライン診療においては,患者さんから正確かつ十分な情報を収集することが,適切な診断や治療の基盤となります.対面診療とは異なり,患者さんを直接診察できないため,問診や観察を通じて得られる情報が特に重要になります.今回は,オンライン診療において,医師が患者さんから効果的に情報を収集するための具体的な技術と工夫について解説します.

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問題1138・1139・1140

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1948-1954
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書評
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 本書は《シリーズ・高次脳機能の教室》のトップバッターとして出版された.本シリーズはこれから高次脳機能/神経心理学を学ぼうとする人たちを対象としているので,記憶・記憶障害のエッセンスが,この分野のエキスパートである著者のわかりやすい文章と美しい図表で優しく語られている.しかし,内容は深い.認知症にかかわる経験豊富な多くの職種の皆さんにも,手元に置いて繰り返し読んでいただきたい内容である.

 私が神経心理学を学び始めた1990年前後は,神経心理学の研究対象が失語,失行,失認などから記憶,情動,いわゆる前頭葉症状へと拡大しつつあった時期であった.エピソード記憶の障害を学ぼうとすれば,自然に目の前のアルツハイマー病の患者さんに引きつけられた.本書でも紹介されている語義失語を意味記憶障害,意味性認知症の視点から再評価した師匠の田邉敬貴先生の仕事にもかかわることができた.そして,認知症の人の生活支援を考えると,保たれている手続き記憶の活用が欠かせなかった.当時は,まだまだ神経心理学をベースにした認知症の研究者は少なかったが,自然に認知症の研究や診療に進むことができたのは,本書のテーマである記憶障害の診かたをある程度身につけていたおかげであると思っている.本シリーズの編集者である河村満先生が冒頭で述べられているように,高次脳機能の診かたがわかると,認知症の症状を具体的に理解することができるようになり,患者さんや家族が何に困っているのか,どうすれば満足のいく生活をすることができるかまで考えられるようになると思われる.

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 近年,薬剤耐性の問題を考慮した適切な薬物療法や感染制御における薬剤師の役割はますます重要になっており,いっそう積極的な関与が求められています.本書はそうした時代の要請に応える形で編集され,感染症分野で必要とされる理論と実践を体系的に学ぶことができます.ぜひ多くの薬剤師の方や,感染症治療や感染制御学を学ぶ薬学生に本書を手に取っていただきたく,ご紹介します.

 本書は『総論』『感染臓器・原因微生物からみた感染症』『感染症の治療薬』『感染制御学』と大きく4つのまとまり(「ひきだし」のタイトルになぞらえて「段目」)から成り立っています.

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 本書は,経験ある臨床医が編み出した実践的スキルの宝庫である.現代の医療においてはevidence based medicine(EBM)を実践することは重要である.しかし,実際の臨床においては,EBMだけでなく,診療におけるさまざまな「コツ」,「実践知」(=特定の状況下で有用な知恵),「創造的な問題解決法」が存在する.これらは言語化しづらいため,暗黙知として,経験ある医師が個人で身につけていることが多い.本書は,このような「診療におけるライフハック」(=診療ハック)を,経験ある臨床医たちが惜しみなく公開した,実臨床の現場で大変有用な書籍である.

 本書のなかから,特に私の心をつかみ,日々の診療に新たな視点を与えてくれそうな「診療ハック」をいくつか紹介したい.

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 内分泌代謝領域は,医学生やレジデントにとって,いつも苦手とされる分野の1つである.一方で,私のようにこの領域が学生時代から好きなレジデントもおり,本書のようなマニュアルを読むと今でもワクワクする.内分泌代謝の診療では,医学生・初期研修医から基本領域専攻医では日常診療に潜む内分泌疾患を見逃さないようにいかにアンテナを高くするかがポイントだが,内分泌代謝専攻医にとっては甲状腺疾患・副腎疾患・下垂体疾患・性腺疾患など数々の病態への診断・治療から,常に遭遇している糖尿病診療の実践・応用まで,多くのハードルがあり,すぐに使えるわかりやすいマニュアルが必携といえる.

 われわれの教室では,内科・総合診療専攻医と内分泌代謝専攻医の両者が今まさに研鑽しており,初学者から専門医までの視点で,教室員で楽しく読ませていただいた.まず全体を眺めるとレジデントが内分泌代謝診療において比較的遭遇しやすい病態がピックアップされており,それぞれの内容が過不足なく簡潔に載っていることに気付く.さらに多岐にわたる疾患でも,それぞれの情報にアクセスしやすい構成となっている.見逃さないためのチェックリスト,内分泌検査の解釈,そして合併症や治療まで,処方例も交えて詳細に記述されていることから,今すぐ知りたいことにたどりつきやすい即戦力となるような工夫がみられる.

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 私は,滋賀の田園地域中核病院の内科の責任者をしており,現在,「病棟での輸液の質・安全性」を担保するにはどうすべきかと苦慮しています.そのなかで,数十年ぶりに本書を電子書籍で読み返しました.

 本書との最初の出合いは,研修医だったころ(1989年),大学附属病院での当直の夜,カンファレンスルームにある本棚でしたが,その時読んだのはこの版ではなかったと思います.初版は1981年と書かれており,青い表紙だったようです.私が手に取った本の表紙は黄色だったので,第2版と思われます.1997年に出版された第3版が電子書籍で購読可能ということは,この本がいまだに“現役”であることを示しています.

目次

62巻11号 , 2025年10月 , pp.1736-1739

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62巻11号 , 2025年10月 , pp.1957
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62巻11号 , 2025年10月 , pp.1958-1959

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62巻11号 , 2025年10月 , pp.1960

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62巻11号 , 2025年10月 , pp.1962