胃印環細胞癌の多様性からみた内視鏡像・病理像の理解
はじめに
近年H. pylori(Helicobacter pylori)感染者の減少に伴い胃癌の発生率が減少している一方で,欧米では印環細胞癌(signet-ring cell carcinoma ; SRCC)の割合が増加している.胃SRCCは未分化型癌のうち病理組織学的に癌細胞内に粘液を貯留する印環型の細胞から成る腺癌とされるが,その病理組織学的な特徴は発症機序により異なることが明らかとなりつつある.また,SRCCに特徴的なゲノム異常も複数報告され,ゲノム異常と多様な形態像との関連も見いだされている.SRCCの予後についてはこれまでに矛盾するデータが報告されてきたが1)2),SRCCの多様なゲノム異常や周囲環境が一因となっているものと推測される.本号では,胃SRCCの定義・分類の変遷とともに,近年明らかとなってきた胃SRCC発生・進展に関わるゲノム異常や外因性因子(H. pylori感染の有無など)と病理組織学的・内視鏡的特徴に関して,専門家の先生方に概説いただき,最新の知見を紹介したい.
胃印環細胞癌の病理(総論)
要旨●WHO分類では,PCCs(poorly cohesive carcinomas)の中でSRC typeとnon-SRC type(PCC-NOS)に区別されている.印環細胞(SRC)は胃の腺頸部から発生し,胃の分化の方向性を保持しながら層構造を形成する.印環細胞癌(SRCC)由来株化細胞を用いた研究では,N/C比の高い小さな細胞から典型的なSRCに分化することが確認できる.SRCは硬癌に移行する予後の悪い癌とされているが,腫瘍内のSRC成分が多いと予後が比較的よいとの報告もある.本稿ではSRCの発生と進展について,形態学的な観点から概説する.
H. pylori陽性,陰性胃印環細胞癌の病理学的相違点
要旨●胃の印環細胞癌(sig)のうち,H. pylori(Helicobacter pylori)陽性例には純粋にsigの形態をとるもの,他組織型との混在を示すものがある.また,H. pylori陰性でもsigは発生しうる.H. pylori陽性,陰性例における胃sig症例の臨床病理学的検討を行い,次の結果を得た.H. pylori陽性,陰性例で胃粘膜萎縮の程度は異なるものの,どちらも腺境界部を中心に腫瘍が発生する.H. pylori陰性例は粘膜中層に腫瘍がとどまり,胃型粘液形質を有し層構造を示す腫瘍が多い.H. pylori陽性例は初期には粘膜内で層構造を示すが,全層性発育に達すると低分化腺癌に変化し,粘膜下層への浸潤能を獲得する.分化型癌との併存例(主に手つなぎ型癌)はsig純粋症例とほぼ同じ臨床病理学的特徴を呈するが,胃腸型の粘液形質を示すという相違点があり,発生機序が異なる可能性が高い.
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