自ら「キング」を名乗る怪しい男の本をプロ作家が斬る
セザキングって誰だ.初めて会ったのは六本木の美術館の中で開かれた某YouTuber心臓外科医の結婚パーティー.某社の編集者と3人席であった.席について私はその小柄な男と乾杯し,酔いに任せていじり倒した.初対面からセザキングと呼び,列席のアイドルと乾杯するのに無理やり連れて行った.お堅いスーツ姿のこの男は挙動不審で,間違っても「キング」を自称するタイプには見えない.正直胡散臭いとは思ったが,小説の変なキャラのモデルに使えるかとLINEを交換した.
2回目に会ったのは横浜だった.私が歯医者前だと言っているのに「うしごろ」という焼肉屋の予約をしてきた.平日昼間の半個室,網を隔てたおっさん二人が向かい合って話し始める.名古屋生まれ山形大学卒の精神科医で,臨床は週一回,それ以外は会社を作りUSMLE(米国医師国家試験)のオンラインサロン運営と.やっぱり怪しい.
だが,そこから聞いた話はすごかった.帰国子女でもないのに当時の最高点でUSMLEに一発合格,以降は勉強法を教え続けている.サロンには220人以上も会員がいて,2020年に勉強法を本にまとめた.つまり,「自ら達成」×「指導経験豊富」×「その知見を発表済」である.おわかりだろうか.これ以上,この試験勉強に詳しい人間は少なくとも日本にはいない.間違いなく第一人者だ.つまりキングである.少々イラっとするが,たしかにセザキングだ.
そんな彼の本が大幅改訂され,こともあろうかUSMLE受験経験のない私に書評依頼が来た.私は現役外科医であり,プロの作家でもある.これまで出した本は命懸けで書いたものばかりで,嫌味だがすべて売れている.医学書も三冊単著で出した.一旦は引き受けたものの,おべっかを書く主義ではない.生半可な本であったら書評を断ろうと思っていた.焼肉代も私が払ったし.
だが,読み始めてすぐに惹き込まれた.まず文章が上手い.本の中にもあるが,USMLEの学習と指導で日本語が上達したのだろう.そして挟まれるコラムも洒脱だ.だがそんなことより本書のような実践書に必要なのは,
(1)正しく(2)豊富な情報が,(3)すぐ実践できる形で提示されていること
である.(1)の検証は私には叶わぬが,例えば「選択肢だけで答えを選ぶ」ようなトリッキーなものも含めて圧倒的な説得力がある.(2)は間違いない.このページ数に巻末付録がついたら,8,000円でも安いと作家の感覚で思う(定価3,960円).なにより本書が素晴らしいのは(3)だろう.読んで,この通りに努力をするだけで合格できそうである.医学生向けのスケジュールや,誰でも使える学習スケジュール表がダウンロードもできるのである.これは編集者の努力の賜物であろう.磨き込まれた,プロの仕事だ.悔しいが,いい本だ.中山祐次郎,責任を持って本書を推薦する.

A5・頁288 2025年6月
定価:3,960円(本体3,600円+税10%)
[ISBN978-4-260-06152-0]医学書院 刊