電子版ISSN:1882-1308
印刷版ISSN:0370-5579
印刷版発行年月:2026年2月
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特集 もっとAIを活用する!—明日から使えるヒントと将来展望

企画にあたって

80巻2号 , 2026年2月 , pp.163
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 おかげさまで,本誌『臨床眼科』は2026年に創刊80周年を迎えます。これを記念し,1月号・2月号の特集では,眼科領域の進歩を振り返るとともに将来像を見据えながら,明日からの診療に活かしていただけるようなテーマで特別企画を組みました。

 2月号では特集「もっとAIを活用する!—明日から使えるヒントと将来展望」をお届けいたします。近年,生成AIはさまざまな分野で活用されるようになり,眼科医療の領域も例外ではありません。例えば,眼底画像の自動解析による疾患スクリーニングや,診療記録の効率化,さらには研究デザインや論文執筆の支援など,生成AIは臨床・研究の現場において欠かせない存在になりつつあります。

≪総論≫
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●生成AIは診療録や紹介状の下書き,患者説明の平易化,文献レビューや論文の草稿支援などに活用されており,医師が最終責任をもち出力を検証する「協働パートナー」としての視点が重要である。

●眼科領域では診断支援(日常検査の自動解析),日常診療支援(カルテ・紹介状・説明文書の効率化),研究支援(文献探索・要約・執筆支援)の三本柱で活用が加速している。

●正確性・プライバシー・バイアス・依存リスクなどの課題があり,適切なプロンプト設計と出力検証,匿名化・ガバナンス強化を前提に,将来的にはマルチモーダル統合・個別化医療・教育支援への発展が期待される。

≪生成AIを活用した業務改革≫

生成AIで日常業務を最適化する

80巻2号 , 2026年2月 , pp.174-180
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●生成AIは眼科医の日常業務効率化に大きく寄与する。

●ChatGPTを用いた手術スケジュール調整や知識共有など実例を紹介する。

●生成AI活用には人間による検証とガイドライン遵守が不可欠である。

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●AIと医師の協働による文書作成が現場での最適解と考える。

●定型的文書の作成では,時間短縮と品質維持を達成できる可能性がある。

●非定型文書の作成では,時間増の恐れがある一方で品質は維持・上昇する可能性がある。

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●研究の目的が社会の課題を解決することであるなら,生成AIを上手に活用して効率よく成果を出すことは,今の時代に合った自然な取り組みといえる。

●一方で,どこまでAIに任せてよいのかという倫理的な境界線を明確にしておくことが大切である。

●AIの便利さを知るだけでなく,リスクや注意点も理解して使いこなすことが,基本的なリテラシーになっていくだろう。

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●生成AIには多彩な性質・機能があり,診療・研究へ応用可能である。

●プロンプトエンジニアリングにより出力の精度の向上が期待される。

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●ChatGPTは医学教育や業務効率化など,多様な活用が可能である。

●プロンプト設計や人による最終確認が運用上の鍵となる。

●個人情報保護やチーム内でのルール整備も重要な課題である。

≪AI診断の展望≫
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●日本眼科学会が主導するJOI Registryは,全国の医療機関から眼底画像・OCT画像などを自動収集・標準化する国内最大規模のデータベースである。「自動化・標準化・利活用・還元」の4原則に基づき,データが研究を生み,その成果が再び臨床現場へフィードバックされる世界の実現を目指している。

●JOI Registryのデータを活用して開発された「眼底年齢推定」「性別推定」「代謝関連指標(血圧・血糖値など)推定」などのAIモデルが無償公開されているほか,JOI Registry会員向けに無償公開データセットが準備されている。これにより,データを十分にもたない研究者でも研究が可能となるほか,眼から全身の健康を探る「オキュロミクス」の基盤としても機能している。

●AIのフェーズは開発から社会実装へと移行しており,JOI RegistryはPMDAの承認を得たAI医療機器(SaMD)開発や市販後調査などの規制対応を支えるインフラとなりつつある。医師・研究者・企業が連携し,単にAIを使うだけでなく,臨床データを通じてともにAIを「育て」,社会実装を持続的に支える共創の場としての役割を担う。

データベースとAI診断モデルの作成

80巻2号 , 2026年2月 , pp.215-221
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●電子カルテの非構造性が二次利用の実装を阻害している。

●構造化データの集積(データベース)が医療情報活用の基盤である。

●教師あり学習による人工知能診断の限界を,大規模言語モデルと医療画像基盤モデルが乗り越える可能性がある。

AI vs. 眼科医の診断力

80巻2号 , 2026年2月 , pp.222-226
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●筆者らが開発した前眼部疾患診断支援AIは,前眼部角膜疾患の分類において,AIを用いない眼科医の正答率を超えた。

●眼科医がAIを用いて分類すると,AIの正答率を超えた。

●AIが虚偽の診断を下すと,そのAIを用いて診断するレジデントや専門医の正答率は下がるが,角膜専門家の正答率は変わらなかったため,AIに依存しない専門知識の習得も必要である。

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●筆者らは眼科医の診断プロセスを模した緑内障スクリーニングAI(AI-GS)を開発した。

●複数モジュールAIの統合により,汎用性と早期緑内障検出性能を実証できた。

●レポートに所見を可視化・定量化し,診断根拠の解釈性を向上させた。

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●DeepEyeVisionは眼底健診の読影支援AIを開発している。

●カラー眼底像用の2つの認証AI医療機器プログラムを上市している。

●網膜光干渉断層像を解析して形態の健常逸脱をヒートマップ表示しようとしている。

今月の話題

Zinn小帯の最近の知見

80巻2号 , 2026年2月 , pp.147-152
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 水晶体囊を支えるZinn小帯は大事な機能を有する一方で,その組織の脆弱性により解明が難しかったが,新しい電子顕微鏡の台頭によりZinn小帯に関する基礎研究は急速に進んでいる。Zinn小帯が脆弱になるメカニズムや,近年の研究で明らかになった後部Zinn小帯水晶体囊付着部に存在するfibrillar girdleに関して,現在の知見をまとめる。

連載 Clinical Challenge・71
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症例

患者:54歳,男性

主訴:右眼の流涙と眼脂

既往歴:20年前に両眼にLASIKを受けた以外の特記事項なし。

家族歴:特記事項なし

喫煙:なし

飲酒:機会飲酒

現病歴:1年前から右眼の間欠的流涙と眼脂の増加を繰り返し,前医で抗菌点眼薬およびステロイド点眼薬により加療されていたが,改善と再発を繰り返したため,当院へ紹介となった。血性流涙はなかった。

連載 やり方・見方のコツを伝授! スキルアップ眼病理・11

結膜異形成

80巻2号 , 2026年2月 , pp.153-155
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今回のポイント

●結膜上皮異形成の病理組織学的特徴は,異型性を有する扁平上皮様の腫瘍細胞の増殖が結膜上皮内にみられることである。

連載 今日から実践!ドライアイA to Z・11
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◉ドライアイの患者さんは,外来で日々多く出会う身近な存在です。しかし,点眼治療だけではなかなか満足していただけないケースも少なくありません。そんなときに役立つのが,涙の出口を優しく塞ぐ「涙点プラグ」です。涙点プラグは手技がシンプルで,その場で“うるおい感”を実感してもらえることも多く,外来で取り入れやすい治療法です。最近はプラグの種類も増え,以前より扱いやすい製品が登場してきました。本稿では,プラグ選びのコツや実際の手技,ちょっとした注意点を,海道美奈子先生よりわかりやすくご解説いただきます。

臨床報告
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要約 背景:眼トキソプラズマ症(OT)はトキソプラズマ原虫による再発性の網脈絡膜炎であり,再発により視機能が悪化するリスクがある。再発を予防する確立された治療法はなく,治療戦略の構築が課題となっている。

症例報告:OT既往のある70歳台の男性が眼内炎症の再発で受診した。アセチルスピラマイシンでは消炎が得られず娘病巣の拡大を阻止できなかったが,びまん性汎細気管支炎治療のために切り替えたエリスロマイシン(EM)により消炎が得られ娘病巣の拡大も阻止され,10か月以上再発はなかった。

結論:EMはOTの再発予防として有用な選択肢となる可能性がある。

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要約 目的:線維柱帯切除術後の合併症が複数生じた場合,それぞれに対処が必要である。今回,落屑緑内障に対する濾過手術後に過剰濾過により前房が消失し,その後数時間で眼底透見不能な乳白色の混濁が瞳孔領に生じた症例を経験したので報告する。

症例:84歳,女性。右眼落屑緑内障に対し線維柱帯切除術を施行した。術前から眼内レンズ動揺と下方偏位を認めていた。術後12日目に眼痛および視力低下のために受診した際には,右眼の前房が消失していた。その約5時間後の診察時には瞳孔領が乳白色の混濁した物質で満たされており,眼内レンズならびに眼底が観察不能となっていた。濾過胞の白濁や濾過胞周囲の充血の悪化,前房蓄膿は認めなかった。感染性眼内炎を疑い再手術を行った。瞳孔領の混濁した物質はフィブリン膜を伴い,瞳孔周囲の虹彩と強く癒着していた。眼内レンズの後方にも混濁を認めたため,硝子体手術を実施し,抗菌薬治療を行った。術後,前房は形成され,混濁の再燃はなかった。

結論:線維柱帯切除術後に眼内レンズの前方移動による浅前房が高度に起こった症例を経験した。前房が消失した場合には前房蓄膿は観察できないことがあるので,術後感染を疑う際には注意が必要と考えられた。

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要約 目的:術後せん妄(POD)は高齢者に多く発生し,QOL低下や入院期間延長の一因となる。本研究では,精神科リエゾン介入を受けた眼科手術患者を対象に,PODのリスク因子を明らかにすることを目的とした。

対象と方法:2017年7月〜2021年8月に東京大学医学部附属病院で眼科手術を目的に1泊以上入院し,術前または術後に精神科リエゾン介入を受けた16例を対象とした後ろ向き診療録研究を行った。リスク因子はせん妄リスクアセスメントシートに基づき,年齢(70歳以上),脳器質性障害,認知症,アルコール多飲,せん妄の既往,リスク薬剤の使用,全身麻酔を挙げた。術前後のリエゾン介入群におけるリスク因子の比較,PODを呈した患者の背景因子を検討した。

結果:対象は平均年齢82.9歳で,全身麻酔15例,局所麻酔1例であった。16例中9例(56.3%)にPODを認め,すべてが過活動型であり,薬物治療により軽快した。術前と術後のリエゾン介入群の間でリスク因子に有意差はなかった。全身麻酔で角膜移植を受けた70歳以上の患者では,すべての症例でPODの発症が認められた。さらに,PODの7例(78%)では僚眼視力が0.1未満であった。

結論:リエゾン介入を受けた眼科手術患者を検討した結果,高齢,全身麻酔下での角膜移植は,PODと関連する可能性が示唆された。また,僚眼の著しい視力低下もPODの発症に関連する可能性が示唆された。

Book Review
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 辞書を引くとトリビア(trivia)とは,「雑学的な知識や豆知識」という。語源はラテン語の「三叉路」らしい。古代ローマの三叉路が多かったことから「ありふれた場所」から転じて「些細なこと」を表すようになったとのこと。

 思い出すと,2002年のテレビ番組『トリビアの泉』では雑学的な知識を楽しく紹介していた。トリビアは「知っていると面白い雑学や豆知識のこと」の認識が広まった。

目次

80巻2号 , 2026年2月 , pp.138-139

欧文目次

80巻2号 , 2026年2月 , pp.140-141

学会・研究会 ご案内

80巻2号 , 2026年2月 , pp.262-267

アンケート用紙

80巻2号 , 2026年2月 , pp.270
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次号予告

80巻2号 , 2026年2月 , pp.271

あとがき

80巻2号 , 2026年2月 , pp.272
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 最近,米国で「ブルーカラービリオネア」という現象が注目されているそうです。これは人工知能(AI)の発展により,これまで以上に肉体労働者や現場の担い手が重宝されるようになったことを象徴する言葉として語られています。AIの進展が,社会の価値構造そのものを変えつつあることを示す1例といえるでしょう。

 医学書院は月刊誌「臨床眼科」のみならず,さまざまな書籍を発行していますが,そのなかでも近年の売れ筋の一つが,近畿大学皮膚科主任教授・大塚篤司先生著の『医師による医師のためのChatGPT入門』シリーズであると伺っています。これは,医療分野においてAIに対する関心は高まっている一方で,どのように活用すればよいのかわからないという現状を如実に反映しているのではないでしょうか。