臨床泌尿器科 80巻 2号 (2026年2月発行)

特集 泌尿器科の魅力—迷宮のサブスペシャリティ

電子版ISSN:1882-1332
印刷版ISSN:0385-2393
印刷版発行年月:2026年2月
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特集 泌尿器科の魅力—迷宮のサブスペシャリティ 企画にあたって
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 泌尿器科は,腫瘍・結石・感染症・排尿障害・ED・外傷などの幅広い領域を扱う診療科であり,たくさんのサブスペシャリティが存在します.この多様性こそが泌尿器科の最大の魅力です.ひとつの診療科でありながら,男性・女性,小児から老年,さらには腎臓・内分泌・生殖医療まで,まるで迷宮のように複雑で奥深い世界が広がっているのです.

 大学や教育施設ではいくつかの専門領域に重点を置くことが多いと思いますが,実際の日常診療では幅広く知識と技術が必要で,泌尿器科医には内科的思考と外科的思考を兼ね備えた診療が求められます.近年のロボット支援手術や低侵襲治療の進歩により,外科領域の中でも非常に革新性に富んだ分野となっている一方で,排尿障害や性機能障害といったQOLに直結する問題に取り組むことも重要であり,患者さんとの信頼関係を築きながら治療を進めるコミュニケーション力も不可欠でしょう.こうした泌尿器科の多様性は,他科にはないやりがいをもたらします.

【鼎談】
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大家(司会) 今月号の特集はタイトルを「泌尿器科の魅力」,そして,「迷宮のサブスペシャリティ」と副題をつけさせていただきました.われわれ泌尿器科医は日常診療をしながら泌尿器科の魅力を常に感じているわけですけれども,本日は本誌編集委員3名で泌尿器科の魅力というものを探っていきたいと思います.

 ご存じのように,泌尿器科は15の領域に分かれており,それぞれの領域には専門家がおり,大学などの教育施設ではそのうちのいくつかを主に扱っていることが多いと思います.

【領域別】

小児泌尿器科

80巻2号 , 2026年2月 , pp.116-120
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Point

◆小児泌尿器科は成長発達段階に応じた長期的視点を必要とする独自の専門分野である.

◆小児泌尿器科疾患に対して,機能的な側面を考えながら形成外科的要素を含む精緻な外科手技を行うことができる.

◆小児泌尿器科領域では,日本小児泌尿器科学会認定専門医の制度がある.

泌尿器科腫瘍

80巻2号 , 2026年2月 , pp.122-127
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Point

◆サブスペシャリティとしての泌尿器科腫瘍は,主に悪性腫瘍を取り扱うが,希少がんを含めその対象は広い.

◆手術においては,ロボット支援手術が急速に普及しており,今後もその適応がいっそう拡大するものと予想される.

◆薬物療法においては,多くの新規治療の導入が見込まれており,さらなる複雑化が予想され,それに対する着実な備えが求められる.

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Point

◆腎不全・腎移植は内科的知識と外科的技能を同時に磨ける横断的領域である.

◆患者の生命予後やQOLを大きく改善し,社会復帰や妊娠・出産の実現にも直結する.

◆次世代透析技術,ロボット支援腎移植,異種医療など革新に関与できる可能性が高い.

◆若手泌尿器科医にとって,キャリア拡大や研究発展に直結するサブスペシャリティである.

尿路結石

80巻2号 , 2026年2月 , pp.134-138
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Point

◆尿路結石症は生涯罹患率が高く,働き盛りから高齢者まで幅広い年齢層で起きる.

◆尿路結石ができる機序は解明されておらず,多くの研究テーマがある.

◆尿路結石症の治療は日進月歩である.

尿路性器感染症

80巻2号 , 2026年2月 , pp.140-145
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Point

◆起因菌と耐性動向の把握 : 尿路・性器感染症の主要起因菌と薬剤耐性(ESBL,キノロン耐性など)を継続的に解析する.

◆診断精度と迅速化 : 培養検査に加え,迅速診断法や分子生物学的手法の有用性を検証し,早期治療につなげる.

◆リスク因子と予防戦略 : カテーテル使用や性行動などの危険因子を明確化し,再発予防や感染対策を検討する.

女性泌尿器科

80巻2号 , 2026年2月 , pp.146-149
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Point

◆女性泌尿器科は下部尿路症状(LUTS),骨盤臓器脱(POP)など日常生活に影響を与える疾患を扱い,QOL改善に大きく貢献できる.

◆女性泌尿器科は保存療法から高度手術まで幅広い治療を提供し,チーム医療が実践可能である.

◆女性泌尿器科は超高齢社会やフェムテックの進展を背景に社会的意義と将来性がますます高まる分野である.

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Point

◆アンドロロジーは,男性不妊症,性機能障害,加齢男性性腺機能低下症(LOH症候群)を中心に,幅広い内分泌疾患を対象とする領域である.

◆精子形成や生殖内分泌に関する基礎研究・臨床研究が活発に行われており,日本は世界のアンドロロジー研究を牽引している.

◆不妊治療の保険適用も追い風となり,男性不妊を主訴とする患者数は急増しているため,アンドロロジーは今やサブスペシャリティにとどまらず,一般泌尿器科診療の一環として位置づけられるべき状況にある.

副腎・後腹膜

80巻2号 , 2026年2月 , pp.158-160
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Point

◆副腎腫瘍は泌尿器科において摘出手術が施行される.

◆良性腎腫瘍は,ロボット支援手術が保険適用となっている.

◆後腹膜腫瘍では,後腹膜肉腫の対応が肝要である.

老年泌尿器科・前立腺肥大症

80巻2号 , 2026年2月 , pp.162-165
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Point

◆日本人の平均寿命は男性が81.09歳,女性が87.13歳であり,本邦は世界に類をみない超高齢社会である.

◆高齢者は,青壮年患者とは異なる特有の泌尿器疾患/症候を有するのみならず,身体的・精神的・あるいは社会的に脆弱(フレイル)であることが多いため,注意深い対応が必要である.

◆前立腺肥大症に対して,新規の低侵襲外科治療(MIST)の導入が盛んである.

排尿機能・神経泌尿器科

80巻2号 , 2026年2月 , pp.166-175
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Point

◆排尿機能・神経泌尿器科領域は新生児から高齢者まで全年齢層の下部尿路機能障害の診療,さらに下部尿路機能障害に対する基礎・臨床研究を行う領域である.

◆この領域の基幹学会として一般社団法人日本排尿機能学会があり,学会の専門医として排尿機能専門医の認定も行っている.

◆泌尿器科医,特に排尿機能専門医には,他診療科・多職種連携のもと下部尿路機能障害の診療,研究,教育の推進役となることが期待される.

外傷・救急・再建分野

80巻2号 , 2026年2月 , pp.176-180
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Point

◆「外傷・救急・再建」分野は,「外傷・救急」と「再建」の領域に分かれる.

◆「外傷・救急」領域は救急や外科,整形,麻酔科と連携しつつ専門性を発揮でき,迅速かつ的確な判断が生命とその後の泌尿器機能を左右する.

◆「再建」領域は,繊細な技術と手術デザインへの豊かな想像力が求められ,患者の人生を根本から変える可能性を秘めている.

エンドウロロジー・腹腔鏡

80巻2号 , 2026年2月 , pp.182-185
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Point

◆エンドウロロジー・腹腔鏡は低侵襲性と高い治療効果を兼ね備えた領域である.

◆技術認定制度と重大事例報告制度により,腹腔鏡手術,ロボット支援手術は安全性と教育環境が整備されている.

◆エンドウロロジー,腹腔鏡領域はレーザー,ロボット,AIの進歩により,さらなる発展が期待される.

連載 保険を理解し,利用しよう・第11回

新規保険適応を目指すには

80巻2号 , 2026年2月 , pp.187-190
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Point

◆優れた医療技術を広く国民(患者)に提供するために保険医療として行えること(保険収載)が重要である.

◆医療者が医療技術の保険収載を目指す方法には,①医療技術提案書により医療技術評価分科会の評価を受ける,②先進医療から保険収載を目指すなどがある.

◆要望する医療技術により,適したプロセスを選択することが重要である.

学会印象記
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日本泌尿器腫瘍学会第11回学術集会が,香川大学医学部・泌尿器科の杉元幹史会長,愛知医科大学医学部・病理診断学講座の都築豊徳会長のもと,2025年10月18,19日にパシフィコ横浜で開催されました(写真1).例年と同じく,第63回日本癌治療学会学術集会が2025年10月16〜18日にパシフィコ横浜で開催されており,両方の学術集会に参加することができました.

 初日午前の最後に行われたGeert van Leenders先生の特別講演1を聴講したあと,第1会場を出ると,すでにランチョンセミナーへ向かう長蛇の列ができており,その盛況ぶりに大変驚きました.恥ずかしながら,その規模を目の当たりにしてランチョンセミナーの聴講は難しいと判断し,早々に並ぶことを断念いたしました.その後,あまりの盛況ゆえにランチョンセミナーの弁当が不足する事態となり,急遽,同じくパシフィコ横浜で開催されていた日本癌治療学会学術集会のランチョンセミナーから弁当を調達されたとうかがいました.本学会の参加人数の多さには改めて圧倒されました.

目次

80巻2号 , 2026年2月 , pp.105

次号予告

80巻2号 , 2026年2月 , pp.197

編集後記

80巻2号 , 2026年2月 , pp.198
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 小職も前期高齢者の仲間入りをして身体も所々ガタがきております.階段で転けたり,胃カメラ後に咽頭炎で声変わりしてその後も長く続いたりしています.階段で転けたあとに膝の痛みが続いていたために,整形外科医の指示を受けてMRIを撮影してみると,大腿骨の挫傷および半月板の損傷の診断でした.大腿骨の挫傷とは,骨折はないが骨の中がズタズタになっていました.本来は松葉杖の適応でしたが,既に受傷から1か月経っていることもあり,階段の下降を禁止の対応でした.それもあって週末のランニングは中止しています.

 コロナ前には自分も市民ランナーとして年に2〜3回はフルマラソンを走っていたのですが,4時間の壁はなかなか切れませんでした.今や駅伝やらマラソンの中継も大流行りですから,自分も一流のアスリートを気取って観ていました.その時に感じたのは,マラソンは「実は体に悪いのでは?」という疑問です.一流アスリートが一生懸命身体を駆使して2時間少し走るところを自分は一生懸命4時間以上走るのは,身体に悪いという結論でした.その考えのもとコロナ以後はフルマラソンを引退し,長くてもハーフ位を走っています.