過活動膀胱(OAB)に対しては,詳細な診療ガイドラインも刊行されており,その診断・治療は確立した感があります.しかし,その一方で実臨床におけるOAB 診療に目を向けてみると,診断や治療に難渋する症例も少なくありません.本特集は,企画者自身がOAB 診療を行ううえで,常々感じているクリニカルクエスチョンも含めて,実臨床で役に立つOAB に関する最新の知見をup date することを目的に企画させていただきました.
疫学の分野では,本邦で20 年ぶりに行われた大規模な下部尿路症状に関する疫学調査(JaCS 2023)の結果を紐解いていただき,最新のOAB の有病率に加えて,OAB が日常生活に与える影響(困窮度)に関して解説いただきました.
病態生理の面では,OAB の病態は多岐にわたるわけですが,その中でも超高齢社会(フレイル),膀胱内細菌環境にフォーカスを絞ってOAB との関連性をまとめていただき,OAB に対する新しい診断バイオマーカーの可能性などについても探究いただきました.
治療については,薬物療法の最新トレンド,実臨床で治療に難渋することが多い低活動膀胱合併症例に対するアプローチに加えて,少し視点を変えて,さまざまな医療分野で重要視されている医師―患者間のコミュニケーションがOAB 治療に与える影響についても解説いただきました.
また,実臨床では,治療抵抗性のOAB 症例が多くみられます.本特集では,難治性OAB に対するより実践的な治療法(ボツリヌス療法,仙骨神経刺激療法)の概説に加えて,その難治化のメカニズムについて,基礎,臨床の両面から掘り下げることで,OAB の治療抵抗因子の同定,個別化医療の展開につながればと考えております.
さらに今後の展望として,AI といった最近のトピックスをテーマに,OAB に関する最先端の研究領域にも焦点を当て,OAB 診療の未来を展望します.
本特集を通じて,読者の皆様がOAB に対する最新の診療戦略を理解し,患者だけでなく,医師側にとっても満足度の高いOAB 診療につなげていただければ企画者としてこの上ない喜びです.
名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室
松川宜久