扉
「巨人の肩の上に立つ」。これは自身の知識や成果が先人たちの努力や発見の積み重ねの上に成り立っていることを表す言葉である。現代の神経学もその例外ではない。本特集では,連綿と続く神経学の歴史から13人の巨人を取り上げた。診断法の確立,理論の構築,治療の革新—今日の神経学に息づく先駆者たちの遺業を考察する。
神経学の魅力を普段とは異なる視点から再発見する企画として始めたクリスマス号も,今年で5年目を迎えた。1年の終わりに,自身の知識を歴史の流れに重ねながら,先人の足跡に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
神経学の先駆け デュシェンヌ・ド・ブローニュ
デュシェンヌ(Guillaume-Benjamin-Amand Duchenne de Boulogne;1806-1875)は,19世紀前半までの混沌としていた中で豊富な臨床経験の集積と整理により,神経学の科学的発展の礎を築いた人物である。1835年に電気刺激による筋収縮に気づき,研究を始めた。1842年にパリに戻り,自ら考案した電気刺激装置を携えながら大病院を訪れ,数多くの興味深い症例を診て回った。彼は創意工夫の人で,電気生理学,電気治療,筋生検針,医学的写真撮影などを臨床の場に持ち込んでいる。彼自身が挙げている業績として,進行性筋萎縮症,小児麻痺(ポリオ),進行性運動失調症(脊髄癆),進行性球麻痺,デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどがあり,これらの症例集積と臨床解析は,シャルコーらによる疾患概念の確立へとつながっていった。
ポール・ブローカ—言語脳科学の源流
ブローカは構音言語の機能障害を呈する患者の剖検脳を観察して,構音機能が左半球の前頭葉に局在するという報告をした。この機能局在の発見は神経科学全般の礎であり,言語脳科学の源流となっている。発話失行の責任病巣が島皮質や内側部の線維連絡である可能性があり,従来「ブローカ野」とされてきた左第3前頭回に,われわれは「文法中枢」を見出した。ブローカ野が言語表出の中枢であるとの見方には修正が必要である。
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