電子版ISSN:1344-8129
印刷版ISSN:1881-6096
印刷版発行年月:2026年2月
この号を読む この号を読む
特集 神経放射線医はこう考える—オーダーから結果の解釈まで

78巻2号 , 2026年2月 , pp.95
概要を表示

放射線検査は日常診療で広く行われているが,その価値を十分に引き出せているだろうか。放射線画像は,適切なオーダーと系統的な読影があってこそ,その本領を発揮する。本特集では,単純X線に始まり,MRI,CTの再評価,さらに脳血流やドパミン神経機能を可視化するSPECT,病理変化を空間的に捉えるPETまで,神経放射線領域の主要モダリティを取り上げ,神経放射線医の思考プロセスを追体験していただくことを目的としている。検査前に神経放射線医が何を考え,どの情報を求め,得られた画像をどう読み解いて診断や治療方針に結びつけているのかを整理し,日常診療に活かすための視点を共有する。

この文献を読む
概要を表示

頭部および脊椎領域における単純写真の撮影機会は減少しており,その臨床的意義は限定的である。しかし,単純写真は全体像の把握に有用であり,血液疾患,薬剤性疾患,骨代謝性疾患,骨系統疾患,先天奇形,骨腫瘍などにおいては,いまだ単純写真には高い診断的価値がある。本論では,偶発的に発見され得るものを含め,単純写真が診断の契機となる代表的疾患を概説する。

たかがCT,されどCT

78巻2号 , 2026年2月 , pp.105-122
この文献を読む
概要を表示

たかがCT,されどCTである。本邦のCT保有台数は人口比でOECD諸国平均の4倍を超える。検査体制も広く整い,MRIや核医学と比べ,検査の敷居は低く,日常診療における第一選択として必要不可欠の役割を果たしている。しかし,簡便さゆえに「検査目的:スクリーニング」としか記載(期待)されていない場合もある。もったいない! 頭部CT,頸椎CTが発信する画像情報をくまなく適切に把握する重要性を,症例に即して述べ,診療への活用の一歩としたい。

この文献を読む
概要を表示

本論では,脳・脊髄MRIの基本プロトコルおよび追加シーケンスを簡単に説明し,その実践的な読影ポイントを放射線科的視点から解説する。特に脳MRIについては,横断像だけでなく3方向を組み合わせたプロトコルとするのが望ましい。検査のオーダーにあたってどのシーケンスを追加撮像するかを考える際に,同時に,どのシーケンスは省略可能かも考えられるのが一流のオーダー医である。

SPECT画像診断

78巻2号 , 2026年2月 , pp.137-145
この文献を読む
概要を表示

シングルフォトン核種を用いた脳核医学でよく行われる検査は,血流分布から脳機能を評価する脳血流SPECT,ドパミン神経機能を調べるドパミントランスポータSPECT,および交換神経障害を反映するMIBG心臓シンチグラフィである。画像は部位ごとの異常を読影し,統計解析で定量的評価を行う。有意義な報告のためには,症状,疑われる疾患,経過,既往歴や服薬,MRIやCT所見などの情報を依頼時に明記することが重要である。

この文献を読む
概要を表示

脳内のアミロイドβを反映するアミロイドPETが承認され,アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬の適応評価に利用されている。アミロイドPETは視覚的な判定が基本だが,判定が難しい境界例が一定数存在する。脳内のタウ蓄積を画像化するPETも,利用できる環境が整いつつある。ほかにも糖,酸素,アミノ酸,ドパミンなどを対象としたPETがあり,脳神経疾患の病理,代謝,病勢を評価し,非侵襲的により精細な疾患像に迫ることができる。

総説
この文献を読む
概要を表示

頭部外傷(TBI)は慢性期における認知症や神経変性疾患のリスク因子とされ,その背景の1つに脳老廃物の排泄を担うglymphatic systemの機能障害が推定されている。本論では,TBI後のglymphatic systemの障害と神経変性病理をつなぐ最新知見を概説し,造影剤や拡散テンソル画像を用いたALPS index,血管周囲腔拡大,脈絡叢体積の拡大などのMRIマーカーの臨床応用について紹介する。

この文献を読む
概要を表示

比較神経解剖学は相同性を手がかりに神経系の系統発生を探ってきた。大脳皮質,基底核,小脳は,系統発生学的分類が広く浸透している領域だが,近年の成果は従来の見解に見直しを迫っている。例えば,大脳新皮質は円口類に起源を持つ古い構造である可能性が高まっている。また,原小脳の存在は疑問視され,小脳の起源であるとする言説は根拠を失っている。一方,比較神経解剖学は,神経再生などの新たな課題に挑んでいる。

原著
この文献を読む
概要を表示

2023年以前に発表された日本人のランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)症例報告で,臨床像等についてシステマティックレビューを行った。特に,LEMS発症から診断までの期間に注目し,「どうすれば診断までの期間を短縮できるか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)を検討した。患者プロファイルは,全体の97例中男性76例,女性21例で男女比は3.6:1で男性優位であった。全体の発症年齢の中央値(平均±標準偏差)は62.0(59.3±11.7)歳で,年齢分布では70代にピークがあった。腫瘍合併例(n=84)の発症年齢の中央値(平均±標準偏差)は62.5(60.2±10.8)歳,LEMS診断までの罹病期間の中央値(平均±標準偏差)は3.0(4.9±5.7)カ月で,一方,腫瘍非合併例(n=13)の発症年齢の中央値(平均±標準偏差)は52.0(53.5±15.8)歳,罹病期間の中央値(平均±標準偏差)は6.0(21.1±25.7)カ月であった。上記CQの回答は,神経症状で下肢筋力低下に加えて眼瞼下垂や複視などの眼症状,さらには,口渇などの自律神経症状の組合せがある場合には積極的にLEMSを疑い電気生理検査を検討すべきである。さらには,電気生理検査で診断する前にP/Q型VGCC抗体測定を活用すべき可能性があると考察された。

連載 日本人が貢献した認知症研究の足跡・10

特発性正常圧水頭症とDESH

78巻2号 , 2026年2月 , pp.187-191
この文献を読む
概要を表示

はじめに

 特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)は,くも膜下出血,髄膜炎などの先行疾患がなく,脳室拡大を呈するが脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)の圧は正常で,歩行障害を主体として認知障害,尿失禁という3徴をきたす病態である1)。シャント手術で3徴が改善するため臨床的に重要な病態である。このiNPHの中に,脳室拡大に加えて,シルビウス裂も拡大するが,高位円蓋部や正中部の脳溝は狭小化する患者群(Fig. 1)が存在することに,当時,兵庫県立高齢者脳機能研究センターに在籍していた北垣一先生,森悦朗先生らが気づき,iNPHの特徴的な形態画像所見として報告した2)。そしてのちに,わが国で実施された多施設共同研究SINPHONI(Study of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus on Neurological Improvement)3)の中で,森先生らがこの所見をDESH(disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus,デッシュ)と名づけた。本論では,正常圧水頭症の診療と研究に取り組まれていた脳神経外科の先生たちと森先生とが,iNPH診療ガイドライン作成事業を契機にして出会い,その後協同して,わが国のiNPH診療・研究を牽引し,さらに世界的にも注目されるようになった過程をまとめたい。

連載 原著・過去の論文から学ぶ・20
この文献を読む
概要を表示

こころの座をめぐる諸議論

 精神科医とは精神疾患に罹患した対象の,精神および行動の障害を観察して,その様式を分類し原因を探究し,状態の改善と病理の解明および病気の治癒を図るものである。了解不能な諸症状の背景には脳をはじめとする生物学的な基盤が推定されてはいるものの,その器質的側面と作用機序はこれまでのところ明らかにされていない。行動は精神活動の結果として生じるのであれば,個体の精神—つまり「こころ」—の解明が必要である。われわれはその「こころ」の座を,考えなしに「脳」と捉えがちであるが,これについてはさまざまな議論があることを理解しておかなければならない。本論ではそうした「こころの座」について改めて考えてみたい。

書評
概要を表示

 この度,『よくわかる神経診察』が大田哲生,齊藤直人,澤田潤の三氏によって上梓された。三氏とも学識・経験ともに豊富な臨床家である。原著はDr Geraint Fuller(Gloucester Royal Hospital, UK)の“Neurological Examination Made Easy”で,既に第6版が出版され,フランス語・スペイン語・ポーランド語の翻訳も出ているので好評を博しているようである。和訳についても伊藤直樹氏と岩崎祐三氏によってそれぞれ過去に行われているが,今回は最新版から改めて翻訳されている。神経診察についてはその複雑さから入り口の段階でつまずいてしまう学習者が多いと思われるが,本書はA5サイズで厚みが1.5cmとコンサイスなので,入門書としては手に取りやすい本になっていると思われる。従来の神経診察法に関する書籍では余りに完璧を期するがゆえに複雑になりすぎてしまっているものもあるが,本書は内容も簡明なものとなっている。学生は講義や実習における副読本としてもいいし,研修医は友人と一緒に読んでお互いに練習したり,ベッドサイドでの復習に用いたりしても良いと思う。

 原著では髄節と支配筋または関節運動を覚える「筋節ダンス」などが紹介されており,原著者が初学者向けに工夫したと思われる箇所が見て取れる。

概要を表示

 新生児医療の目標は救命にとどまらず,児の長期予後を改善することであり,その意味で新生児神経は極めて重要な分野である。しかし,多くの新生児科医にとって新生児神経は難解で,苦手意識を抱くことも少なくない。その理由として,病態や責任病巣がわかりにくく,診察から得られる神経学的所見が限られることが挙げられる。

 このたび刊行された,国立成育医療研究センター神経内科・新生児科の先生方による『ケースカンファレンスから学ぶ 新生児神経の診かた』は,新生児神経の基礎から診察のTipsまでを丁寧にまとめた一冊であり,理解を深める上で大変有用である。

目次

78巻2号 , 2026年2月 , pp.93

欧文目次

78巻2号 , 2026年2月 , pp.94

次号予告

78巻2号 , 2026年2月 , pp.201

あとがき

78巻2号 , 2026年2月 , pp.202
概要を表示

 今月は,神経放射線の特集をお届けします。私が医学生だった頃,ようやく頭部MRIが出てきた時期で,授業で数枚の写真が示されたことを思い出しました。まだ,頭部CTを撮像するだけでもずいぶん時間がかかったなあ。病棟で臨床的にWallenberg症候群と診断され,CT画像では何も描出されない病巣が,MRIで見事に見出されたときに感動した記憶もあります。今とは違って,MRIは機器も少ないし簡単には撮像できなかったので,発症後しばらく経過してから確定できたことも覚えています。諸先輩の先生方は,画像の技術革新をしのぐ,神経局在診断を持っていたのがすごいですね。

 神経局在診断と言えば,若手脳神経内科医の教育コースに講師として参加しました。その際,神経局在診断をいろいろ聞いて,脳幹や脊髄の横断図を書いていただいたのですが,多くの若手脳神経科医が,神経解剖を苦手としている印象でした。MRIでたくさんの病変が見えたときに,どの病変が患者さんの症状に関係しているかを考えるのが,神経局在診断です。自分もすごく知っているとは思いませんが,今でも解剖の本を開けることは多いので,局在診断が苦手な方にはぜひ勉強をしていただきたいと思います。