ピックアップ

BRAIN and NERVE 78巻2号 (2026年2月発行)
書評
「よくわかる神経診察」—大田哲生,齊藤直人,澤田 潤【訳】 Geraint Fuller【原著】
閲覧可
ビューアーで読む
片山 隆行 1,2
1独立行政法人国立病院機構旭川医療センター脳神経内科
2独立行政法人国立病院機構旭川医療センター臨床研究部
pp.157 , 発行年月 2026年2月

 この度,『よくわかる神経診察』が大田哲生,齊藤直人,澤田潤の三氏によって上梓された。三氏とも学識・経験ともに豊富な臨床家である。原著はDr Geraint Fuller(Gloucester Royal Hospital, UK)の“Neurological Examination Made Easy”で,既に第6版が出版され,フランス語・スペイン語・ポーランド語の翻訳も出ているので好評を博しているようである。和訳についても伊藤直樹氏と岩崎祐三氏によってそれぞれ過去に行われているが,今回は最新版から改めて翻訳されている。神経診察についてはその複雑さから入り口の段階でつまずいてしまう学習者が多いと思われるが,本書はA5サイズで厚みが1.5cmとコンサイスなので,入門書としては手に取りやすい本になっていると思われる。従来の神経診察法に関する書籍では余りに完璧を期するがゆえに複雑になりすぎてしまっているものもあるが,本書は内容も簡明なものとなっている。学生は講義や実習における副読本としてもいいし,研修医は友人と一緒に読んでお互いに練習したり,ベッドサイドでの復習に用いたりしても良いと
思う。
 原著では髄節と支配筋または関節運動を覚える「筋節ダンス」などが紹介されており,原著者が初学者向けに工夫したと思われる箇所が見て取れる。
 訳書については,訳者が心を砕いたと思われる箇所がいくつかある。例えば「2章発話3. 構音障害」では,原著では患者に復唱させる課題として“Peter Piper picked a peck of pickled pepper”が記載されているが,訳書では本邦でよく用いられる「瑠璃(るり)も玻璃(はり)も照らせば光る」が掲載されている(p.18)。こういった意訳した部分は訳注を付けてもよかったと思うが,紙面の都合や読者の読むリズム・スピードなどを考慮したのかもしれない。訳者の齊藤先生自身が原著にも目を通して欲しいと序文で書いておられるので,興味のある方は原著と翻訳版を比較して訳者の工夫の跡を確かめつつ,その意図したところを考えながら神経学の要諦について考案してみるのも面白いと思う。
 用語については若干の注意を喚起しておきたい。例えばmyotonic dystrophy については「筋緊張性ジストロフィー」と訳されており,日本リハビリテーション医学会の用語集でもそのようになっているが,日本神経学会用語集では「筋強直性ジストロフィー」とするように記載されている。そういった訳語の不統一の箇所は多くはないが,読者諸兄姉は各用語集を参照して確かめていただきたい。
 この本が多くの読者に読まれ,かつ神経診察がより臨床で実践され患者さんの役に立つことを期待している。

 

A5・284頁
2025年10月
定価:5,280円
(本体4,800円+税10%)
[ISBN978-4-260-06275-6]
医学書院刊

NEW

BRAIN AND NERVE 78巻3号 2026年3月 pp.207-210
利用登録

NEUROLOGICAL SURGERY 53巻6号 2025年11月 pp.1041
閲覧可
+
-
メニュー