脳ドックは1988年に日本で誕生した。最初は未破裂脳動脈瘤を発見するためにDSAによる血管撮影が,同年に無症候性脳血管病変を発見するMRIを用いた脳ドックが始まった。その後MRA性能の向上ですべてMRIによる脳ドックとなった。脳ドックで脳動脈瘤が発見され予防手術が可能となった。MRIで発見された無症候性脳梗塞や微小脳出血は脳卒中発症のリスクであり,危険因子の管理で予防治療が進んだ。近年は脳卒中に加え認知症予防が脳ドックの重点となりつつある。
はじめに
脳ドックという健診は日本で初めて誕生した。そもそも予防のための人間ドックは日野原重明先生の先見の明で1954年に日本で初めて開設されたものであり,日本は予防医学の先進国である。脳ドックが1988年に生まれた背景には,それまで極めて手術予後不良であった動脈瘤によるくも膜下出血手術にマイクロサージェリーという画期的な治療法や,侵襲の低い検査法が普及したことが大きい。また同じ年に脳卒中予防,認知症早期発見を目指した脳ドックが生まれたのは,CTより高精度でかつ脳血管も描出可能なMRIが普及し始めたことが大きい。
Ⅰ.くも膜下出血予防のための脳ドック
発症すると半分近くは亡くなるという予後不良の動脈瘤によるくも膜下出血に対して,未破裂のうちに脳動脈瘤を見つければ手術によりくも膜下出血の予防ができると考えた脳神経外科医がいた。ちょうどMRIも普及し始めてはいたがMRA(MR-angiography)はまだ精度が低く使えなかった。1980年代にIA-DSA(intraarterial digital subtraction angiography)が実用化され,通常の脳血管撮影に比して造影剤が少なく侵襲が低い血管撮影が導入された。この最新技術を用いたくも膜下出血予防のドックを1988年3月に「脳ドック」として立ち上げたのが新さっぽろ病院の中川俊男院長と師匠の札幌医科大医学脳神経外科の端和夫教授である。そして家系にくも膜下出血がある人に呼びかけ検査を行い,そのリスクは家族歴のない人の12倍にも及ぶことを突き止め注目を集めた1)。この後,MRAの精度が向上し動脈瘤の検出が可能になったのでDSAからMRAに移行し,MRIによる未破裂脳動脈瘤や脳動脈狭窄検出を主体に潜在性脳虚血病変や脳腫瘍などを検査する脳ドックが全国的に普及した。