本号『呼吸器ジャーナル』第73 巻第4 号の特集は「難治性喘息―なぜこの喘息患者はよくならないのか?」をテーマに企画いたしました.喘息治療はガイドラインの整備や新規治療薬の登場によって大きく進歩してきましたが,依然として一部の患者さんではコントロール不良が続き,日常診療の場で医師を悩ませています.とりわけ若手呼吸器内科医や後期研修医にとっては,喘息標準治療である吸入療法を適切に行っているにもかかわらず改善を示さない症例への対応が大きな課題となっています.本特集は,こうした「なぜ,よくならないのか」という疑問に正面から向き合い,病態の理解から診断,治療戦略,合併症や特殊症例への対応に至るまで,多角的に検討する内容といたしました.
まず第Ⅰ章では,難治性喘息の本質に迫ります.気道リモデリングや炎症メカニズムといった喘息の病態理解は,治療抵抗性を読み解くうえで不可欠です.続く第Ⅱ章では診断アプローチを取り上げ,診断フローチャートや誤った診断を避けるための実践的なスキルを提示しています.喘息と類似疾患の鑑別は時に難しく,診断の精度向上が治療成績に直結します.
第Ⅲ章では治療戦略の再構築に焦点を当てました.吸入療法の失敗要因の分析,デバイス選択と患者教育,生物学的製剤の選択基準,全身ステロイド依存を防ぐ工夫,さらにアレルゲン免疫療法の可能性など,最新の知見を凝縮しています.治療の選択肢が広がる一方で,個々の患者さんに最適化する臨床判断力が求められます.
また第Ⅳ章ではコントロール不良の背景に潜む合併症,すなわちOSAS やGERD,NSAIDs 過敏症,好酸球性鼻副鼻腔炎と喘息のかかわりについて触れています.第Ⅴ章では妊娠,手術といった特殊状況下での喘息管理を扱い,第Ⅵ章では症例を通して実践的なアプローチを学びます.成功例と失敗例を比較検討することは,臨床力を鍛えるうえで格好の教材となるはずです.最終章の第Ⅶ章では,ACO やEGPA といった喘息とオーバーラップする領域の疾患,環境因子への介入,患者満足度の向上など包括的な視点を提示し,長期管理のあり方を示しました.
本特集は,最新のガイドラインを踏まえつつ,日常診療で直面する難治性喘息の課題に実践的な解を与えることを目的としています.ご執筆をお引き受けいただいた各先生方のご尽力に深く感謝申し上げます.読者の皆様には,本号が臨床現場での診療をより確かなものとし,難治性喘息に苦しむ患者さんのQOL 向上につながる一助となれば幸いです.
慶應義塾大学医学部呼吸器内科 福永興壱