扉
慢性骨髄性白血病の治療に導入されたチロシンキナーゼ阻害薬,関節リウマチの治療に導入された抗TNF-α抗体製剤は,分子標的療法のパイオニア的な存在です.これらの臨床への登場からすでに四半世紀ほど経過しました.がんや自己免疫疾患にとどまらず,さまざまな疾患・病態に低分子化合物型薬剤や抗体医薬が開発され治療の選択肢になっています.薬剤だけではなく,CAR-T細胞のように細胞製剤も分子標的療法の新たなプレーヤーとして活躍中です.これらの実用化は画期的な治療成績を実現しましたが,従来の治療では認められなかった副作用・副反応が出現し,分子標的という戦略にもかかわらず無効な症例もいまだ存在しており,克服するべき課題が多々あることも事実です.
本特集では「分子標的療法のアップデート」というテーマのもとで,各分野領域における第一線の方々に解説いただきました.分子標的療法を支える検査の実践の一助につながれば幸いです.
分子標的療法の変遷
Point
●分子標的療法は,従来の細胞障害性抗がん薬を用いた非選択的な化学療法とは異なり,疾患の発生や進展と関連する分子を攻撃する精密医療の基盤となった.
●がん治療で培われた,特定の分子機能を制御するという治療戦略は,免疫という共通項を介して関節リウマチなどの自己免疫疾患へと応用範囲を拡大させた.
●分子標的療法の治療概念は,過剰なシグナルを阻害するだけでなく,囊胞性線維症のように機能不全に陥ったタンパク質の働きを回復させるという新たな次元へと進化を遂げ,多くの遺伝性疾患に道を開いた.
●抗体薬物複合体(ADC)や標的タンパク質分解誘導(TPD)といった新しい技術が登場している.
増殖シグナル分子標的療法
Point
●がんの増殖シグナル分子については,遺伝子変異とその種類の蓄積が密接に関与している.
●がんの薬物療法は,主たる構成が殺細胞性抗がん薬から分子標的抗がん薬へと短期間の内に変化し,今やがんゲノム医療の目玉となるまでに至っていることは注目に値する.
●遺伝子情報を活用した患者層別化に基づいた分子標的抗がん薬治療が個別化医療として生存期間を劇的に改善することが明らかになってきている.
●分子レベルでの解析技術革新により,膨大な数のがんの増殖シグナル分子が同定されてきたことと国策としての取り扱いが功を奏して,分子標的抗がん薬の開発を勢いづけたことで,短期に非常に多くの薬剤が上市されることとなった.
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