検査と技術 54巻 1号 (2026年1月発行)

技術講座 血液
技術講座 生化学
技術講座 生理

電子版ISSN:1882-1375
印刷版ISSN:0301-2611
印刷版発行年月:2026年1月
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技術講座 血液
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Point

●基本的な観察方法を遵守・実施します.

●弱拡大での観察が最も重要です.

●決められた順番で観察を行い,細胞の同定は標本中の細胞の分化・成熟を理解して行います.

●観察する各細胞系統のそれぞれのシーンで所見を書きます.

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Point

●ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)はヘパリンが原因で血小板減少と血栓症を生じる疾患ですが,ヘパリン以外でも同様の病態が生じ,抗PF4抗体疾患と呼ばれます.

●HITはHIT抗体,抗PF4抗体疾患は抗PF4抗体を検出することで診断となりますが,抗PF4抗体は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)でしか検出できません.

●ラテックス免疫比濁法(LIA)と化学発光免疫測定法(CLIA)は自動測定機器で測定できますが,イムノクロマト法(ICA)は測定機器を必要としないのでどこでも測定可能です.

●機能的検査は確定診断に必須ですが,臨床研究に登録する以外での測定は困難です.

技術講座 生化学
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Point

●除タンパク法とは,目的物質の測定を妨害する可能性がある試料中のタンパク質を取り除くための前処理です.

●現在は除タンパク法が不要になった検査項目もありますが,血中のアンモニアなどの測定では採用されています.

●今後は血中薬物測定の前処理などで,除タンパク法活用が期待されています.

技術講座 生理
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Point

●左房径のみでは左房拡大を見落とす可能性があるため,米国心エコー図学会ガイドラインで推奨されている左房容積による評価が望ましいです.

●biplane disk summation法による左房容積は,左房計測に適した断面を描出したうえで,左心耳や肺静脈を内腔に含めないように注意しながら,適切なトレースを心がけることが大切です.

●左房拡大を認めた場合には,心房細動・僧帽弁疾患・左房内血栓・左室拡張障害などを考慮しながら検査を行うことが望ましいです.

トピックス
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セフィデロコルとは

 セフィデロコルは,新規に開発されたシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬である.微生物は生存や発育において鉄を必須要素としているため,周囲から鉄を取り込む必要がある.そのため,微生物は鉄イオン濃度の低い状況下において,シデロフォアと呼ばれる強い鉄親和性を持つ有機化合物を分泌し,周囲の鉄をキレートすることで可溶化し,鉄トランスポーターを通じて自らの体内に鉄を取り込む能力を有している.セフィデロコルは化学構造的にセフタジジムやセフェピムに類似しているが,C-3側鎖に保有するカテコール基が,シデロフォアとして細胞外の鉄をキレートする機能を有することが最大の特徴である1).つまり,通常の抗菌薬はグラム陰性桿菌において外膜を通過するためにポーリン孔を通じて受動的に拡散するが,セフィデロコルは鉄トランスポーターを通じて能動的に取り込まれることで,ペリプラズムのなかに鉄を非常に高い濃度で送り込むことが可能となる1).ペリプラズムに到達したセフィデロコルは鉄と解離し,主にPBP3(penicillin-binding protein 3)に結合して細胞壁合成を阻害する.そのため,高濃度の薬剤によりカルバペネマーゼを含むほとんど全てのβ-ラクタマーゼに対して安定した抗菌活性を有している.さらに,鉄トランスポーターを介して取り込まれることから,外膜タンパクの変異によるポーリン孔の減少や排出ポンプの亢進といった耐性機序の影響も受けにくくなる.そのため,セフィデロコルはカルバペネマーゼ産生菌を含めたカルバペネム耐性菌に対しても抗菌活性を有している.

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はじめに

 CAR-T(chimeric antigen receptor-T)細胞療法が保険承認されて,6年が経過した.従来の治療では不十分であった疾患・病態に対して,高い奏効率と安全性が示されたCAR-T細胞療法は,まさにgame changerといえる.時期を同じくして,二重特異性抗体などの新薬も登場し,CAR-Tをどのように使用するかについては,試行錯誤が続いている.

 CAR-T細胞療法には,ほかの抗がん剤治療などと根本的に異なる要因が多岐にわたって存在する.その要因は,具体的には以下の大きく5種類に分けられる.

①他院からの紹介患者が多い.

②アフェレーシス(血液からの細胞採取)のタイミングを,患者の治療進行,医療機関側のベッド状況,細胞調製の人員,製薬会社側の製造枠の全てを満足するように決める必要がある.

③アフェレーシスから納品までの間はもとの医療機関で治療(ブリッジング化学療法)が行われる.

④一定の割合で製造失敗が起こりうる.

⑤投与後,サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)などの特徴的な合併症が起こりうる.

 本稿ではCAR-T細胞療法に関して,基本的な知識を確認した後,京都大学医学部附属病院(以下,当院)において,このような試練にどのように対処してきたかを概説する.さらに,細胞療法の安定化・運用最適化のために,今後特に検査部門に期待される役割を提示したい.

FOCUS
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はじめに

 臨地実習は,養成施設で習得した知識や技術を実践する場であり,臨床の現場に臨み知識や技術の理解を深めるための機会である.厚生労働省は2016年に診療参加型臨床実習(clinical clerkship)を推奨し,コメディカルにおいても導入が進んでいる.

 臨床検査技師においては,厚生労働省による「臨床検査技師学校養成所カリキュラム等改善検討会」の設立,科目承認校に関する法令1,2)および指定校に関する法令3)の改正を経て,新たな臨地実習教育カリキュラムが適用となった.これを受け,養成施設および実習施設は「臨地実習ガイドライン2021 第3版」4)(2023年6月,日本臨床衛生検査技師会・日本臨床検査学教育協議会作成)に沿った対応をしなければならない.

 日本医科大学多摩永山病院中央検査室(以下,当検査室)では,「臨地実習ガイドライン2021」に基づいた,内容・単位ともに拡充した臨地実習への対応として,学生支援体制の構築と個別介入の工夫を行った.本稿では,これらの試みについて紹介する.

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はじめに

 2020年初頭からのCOVID-19パンデミックは,私たちの社会,特に学習や研修のあり方に劇的な変化をもたらした.集合形式での研修会中止が相次ぐなか,オンライン開催が急速に普及し,今や研修会の主流となっている.社会活動の回復が進むなかでも,オンライン研修の利便性は変わらず評価されており,その重要性は増すばかりである.

 現代の学習ツールとして非常に有効なのがSNS(social networking service)である.SNSは学習コミュニティの形成を容易にし,リアルタイムでの情報共有や活発なディスカッションを可能にする.また,自己表現の場としても機能し,従来の枠にとらわれない柔軟な学習スタイルを提供してくれる.

 筆者はこれまでにいくつかオンライン研修会の企画運営に携わり,工夫を凝らしてきたので,これまでの経験を報告する.

病気のはなし

先天性心疾患(心房中隔欠損症)

54巻1号 , 2026年1月 , pp.48-53
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Point

●心房中隔欠損症(ASD)は先天性心疾患の1つである.小児から成人まで幅広い年齢層に認められる.

●小さな心房中隔欠損は経過観察し,有意な短絡による右心容量負荷所見があれば欠損孔閉鎖の対象である.

●閉鎖治療を行う症例でも小児期にはほとんど無症状であるため,検査所見が重要である.

●閉鎖治療の選択はカテーテル閉鎖と外科手術で,症例に応じて使い分ける.

症例からひもとく疾患

膵臓がん

54巻1号 , 2026年1月 , pp.56-60
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Point

●膵臓がんは罹患数・死亡数ともに増加傾向にあり,わが国におけるがん死亡数の第3位になっている.

●造影CT検査では,乏血性腫瘤と尾側膵管の拡張が特徴的な所見である.

●病理学的診断法としては,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)が用いられる.

●周囲主要血管への浸潤と遠隔転移の有無を評価して,治療方針を決定する.

連載 やなさん。NY留学記・24
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 ウィーンの学会(前回参照)から3週間しか経過していないが,ロサンゼルスにGO.時差ボケに時差ボケを重ねていく柳田.今回は「NSH Histotechnology Convention」という病理検査技術の学会で発表をするためだ.軽い気持ちで演題を出しまくった結果,1時間のworkshopと15分間のExpress Talkの両方が採用された.「英語で1時間…?!」と悩んでいると,「Workshopは私が話す!」とボスからの申し出があり,柳田は15分間のExpress Talkを担当することとなった.

 演題は「デジタル病理画像の精度管理法」.デジタル病理画像は,使用するスキャナーの種類によって画像の色ズレや日々の染色性のズレが,診断や解析に影響を与えるため,それらの色味をプログラミングで補正するという内容だ.

連載 学校と現場をつなぐ臨地実習の在り方—若手臨床検査技師の想い・5
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自己紹介

 私は福岡県の4年制大学の検査学科を卒業し,福岡県の約500床の総合病院で臨地実習を経験しました.現在は佐賀大学医学部附属病院(以下,当院)に入職し,生理検査を担当し4年目になります.当院は約600床を有し,正確性と迅速性が求められる緊張感のなかで多くの検査が行われています.勤務時間内には自己研鑽の時間を確保するのは容易ではありませんが,県内でもまれな症例に触れる機会が多く,日々新しい学びに出会えることが魅力的だと感じています.

 学生時代は微生物検査に興味がありましたが,現在の生理検査業務を通じて技術や臨床知識の習得に励み,多くの患者さんと接するなかで精神面でも成長を感じています.これまでに学会発表を数回経験し,3年目には呼吸生理学の二級臨床検査士の資格を取得しました.今後はそのほかの二級臨床検査士や超音波検査士の資格取得を目標に,さらなるスキルアップを目指していきたいと考えています.

臨床検査のピットフォール
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はじめに

 人工知能(artificial intelligence:AI)の進歩はめざましく,その進化のスピードは新しい段階に入ったといえます(表1).臨床検査データの分野でも同様のはずですが,手放しで楽観視できるほど,いいことずくめではありません.本稿では,従来のデータをどう利用していくか,データ提供の方法は今までと同じでよいのか,データを医療情報の1つとして取り扱っていくうえでの注意点や展望について述べたいと思います.

Q&A 読者質問箱
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Q FFPEブロック作製後3年以上を経過した検体でも,がんゲノムプロファイリング検査を成功させるコツはありますか?

A がんゲノムプロファイリング(comprehensive genomic profiling:CGP)検査では,ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)ブロック作製後3年以内の検体が推奨されています1).しかし,手術からCGP検査まで3年以上経過している場合や,最新の検体が小さな生検しかない場合などがあり,3年以上の古い検体からの検査依頼も増加しています.

ワンポイントアドバイス
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はじめに

 グラム染色は,簡便かつ迅速に実施できるため,感染症の診断や抗菌薬の選択,あるいは治療効果判定に大変有用な技術である.しかし,鏡検技術やグラム染色結果の解釈は,知識や経験など,要員の力量に大きく影響される.また,多くの場合,複数の要員がグラム染色標本を鏡検し結果報告に携わるため,結果報告内容が要員によって左右されないよう,微生物検査室として一定レベルの精度を維持していかなければならない.本稿では,神戸大学医学部附属病院(以下,当院)での運用を交えながら,グラム染色報告の技師間差を少なくする工夫について述べる.

臨床医からの質問に答える
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はじめに

 純水は,処理を加えて不純物を除去したきれいな水であり,臨床検査では,分析装置への供給,試薬の調製,器具の洗浄など,さまざまな場面で使用されている.なかでも,生化学検査においては自動分析装置で多く用いられており,試料や試薬の分注,攪拌,プローブやセルの洗浄,恒温槽の水浴などに純水が供給され,その水質が分析に影響を与える.

 本稿では,純水の基礎と,生化学自動分析装置における水質の影響について述べる.

ラボクイズ

病理検査

54巻1号 , 2026年1月 , pp.78
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2025年12月号の解答と解説

54巻1号 , 2026年1月 , pp.79
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書評
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臨床研究の実践知が随所に盛り込まれた「実務で使える教科書」

 『臨床研究の教科書』第3版の刊行を心よりお祝い申し上げます.著者の川村孝先生とは,京大医学部の教授の一員として長年ご一緒させていただきました.その中で,常に幅広い知識と鋭い洞察を持って議論に臨まれる先生の姿勢に,私は深い敬意を抱いてまいりました.また,学位審査などを通じても,先生が研究方法論や臨床現場の課題に精通されていることを幾度となく実感してきました.そのような先生が丹念に執筆を続けられ,本書が第3版まで改訂を重ねて刊行されることは,まさに日本の臨床研究教育における大きな財産であり,私自身もこの書評を執筆する機会を頂けたことを大変光栄に存じます.

 本書の大きな特徴は,単なる方法論の解説にとどまらず,著者ご自身が積み上げてこられた臨床研究の実践知が随所に盛り込まれている点です.序章では「なぜ臨床研究が必要か」「足らないエビデンスは自分でつくる」といった力強いメッセージが示され,読者が研究を行う動機づけを得られるよう工夫されています.加えて,第1部から第5部にかけて,研究計画の立案,運営,データ解析,成果の公表に至るまで,臨床研究の全過程を一貫して解説している構成は,まさに「実務で使える教科書」と呼ぶにふさわしい内容です.特に,統計解析やビッグデータの活用,倫理的配慮,研究計画書作成の具体的指針などが明確に整理されており,若手研究者にとって羅針盤となるだけでなく,経験豊富な研究者にとっても常に立ち返ることのできる信頼すべき基盤となっています.

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ケアが迂遠であること

◆増補版までの5年間

 本書は,2020年2月に刊行された同タイトルの書籍に補遺と索引を加えた増補版である.本書が論じるのは,「対話や承認それ自体がケアになるという可能性」だ.そのために,医療やヘルスケアの現場で行われてきた「ナラティブ・アプローチ」(個人によって語られる物語=ナラティブを用いたさまざまなケア実践)を,解釈・調停・介入の三つに分類しながら幅広く検討する.そのためにまず,文学や言語学の物語論,哲学の存在論を経由し,「ナラティブとは何か」を考える.そして,それが本書の「骨」であると語る.その頑強さにうっとりと引きこまれる.

 評者も刊行当初に本書を手に取り,刺激を受けたひとりだ.特に終章にある「私たちは〈いずれ死んでしまう存在〉どうしであるがゆえに,適切な聞き手になれる」という洞察には目を開かされ,評者の専門分野である教育や文芸について考えるときにも要所でそれと引き比べてきた,手放しがたい一冊である.

目次

54巻1号 , 2026年1月 , pp.2-3

あとがき・次号予告

54巻1号 , 2026年1月 , pp.80
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 最近,大手臨床検査センターと検査試薬メーカーの工場を見学する機会をいただき,大変興味深く拝見しました.どちらの現場でも印象に残ったのは,あれほど膨大な業務量にもかかわらず,実際に従事する人の数が想像以上に少ないことです.業務の効率化を徹底した結果であり,医療機関で働く私たち以上にその取り組みが進んでいることを実感しました.しかも,その効率化が単なる省力化にとどまらず,品質の維持・向上としっかり両立している点にも驚かされました.現場ではクオリティ・マネジメントを強く意識した業務運営が行われており,異なる業種ならではの工夫や視点に多くの刺激を受けました.私たちの現場でも,見習うべき点が少なくありません.

 医療現場では以前から,医師の時間外労働や過重労働が問題視され,その解決策としてタスク・シフト/シェアが注目されてきました.現在では,単に労働負担を減らすだけでなく,多職種連携を基盤に,各職種がそれぞれの専門性を最大限に発揮できる体制づくりへと発展しています.